概日時計や睡眠中枢に入力する光応答機構は視覚情報を伴わない非視覚光受容と呼ばれる。非視覚光受容の分子メカニズムを理解することは、概日リズム障害の発症機序の解明とその解決に不可欠である。本研究計画では、哺乳類の非オプシン型光感受性因子であるCRYの概日光応答における機能を再検証し、哺乳類における新規光応答メカニズムに分子レベルで迫ることを目的としている。本研究では主にCry1の機能解析を部位特異的に行うため、Creリコンビナーゼを発現した細胞のみで機能欠損できるようにコンディショナルノックアウトマウス(Cry1 floxマウス)を作成した。このマウスの眼球にCreリコンビナーゼを発現するウイルスをインジェクションして、明暗サイクルへの同調性を調べた。コントロールのマウスでは同調可能な10ルクスの光では、Creを発現したマウスでは同調できなくなることが明らかになった。完全には同調が止まらなかったため、インジェクションの効率およびホモログ遺伝子であるCry2の寄与も考え、Cry2のコンディショナルノックアウトマウスの作製と眼球でCreを発現するCreドライバーマウスの作製も行った。さらに我々は、培養細胞に光受容タンパク質とNFATプロモーターにドライブされるルシフェラーゼ遺伝子を発現させて光照射によって活性化するGタンパク質シグナリングをリアルタイムでモニタリングすることに成功した。この再構築系を用いて、CRYタンパク質が光受容シグナリングに及ぼす影響を調べたところ、CRYタンパク質の発現によってシグナリングが活性化する一方、機能阻害では光受容シグナリングの活性化が減弱することを見出した。さらに活性化の亢進に必要なドメインの絞り込みを行った。これらの研究生化により、生体内においても眼球におけるCRYタンパク質が概日光受容に関与しており、その分子メカニズムの一端が明らかとなった。
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