研究課題/領域番号 |
18K14647
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
王 昊 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (70775874)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インスリン / Rabタンパク質 / 全反射顕微鏡 |
研究実績の概要 |
刺激に応じて生理活性物質を放出する調節性分泌経路において、分泌小胞膜の細胞内輸送を制御している単量体GTPase Rab27のエフェクター・タンパク質の一つMelanophilinは、皮膚色素細胞内のメラノソームの皮膚角化細胞での転送を制御していることが知られているが、他の細胞における役割は知られていない。本研究では、Melanophilinをコードする遺伝子が変異しているleadenマウスで、耐糖能が低下し、単離膵島におけるグルコース依存性インスリン分泌能が減弱していることを明らかにした。また、Melanophilinは、膵β細胞に発現し、インスリン顆粒膜に局在していた。インスリン顆粒の開口放出を全反射顕微鏡で直接観察すると、leadenマウス膵β細胞では、刺激前に細胞膜近傍に局在していなかった顆粒からの開口放出頻度が、野生型膵β細胞に比べて、特異的に減弱していた。膵β細胞内で、Melanophilinは、膵β細胞内で、Rab27a、Myosn-Vaの他に膜融合装置SNAREに結合しており、そのいずれかの結合を失わせたMelanophilin変異体は、野生型と異なり、leadenマウス膵β細胞におけるインスリン分泌能低下を回復させないことかった。以上のことから、Melanophilinがこれら分子との複合体形成を介して、分泌顆粒が安定的な細胞膜ドッキングを介さずに膜融合を起こす機構を仲介している可能性が示唆された。これまで分泌小胞膜の細胞膜ドッキングに関わる分子はいくつか報告されてきたがが、あらかじめ細胞膜にドッキングしていない分泌小胞の開口放出に関する分子基盤はほとんどわかっていなかった。本研究によって、その分子基盤の一端が明らかになったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの蓄積が順調に進んでおり、次年度中に論文投稿できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Melanophilinとインスリン顆粒を二重蛍光標識して、生細胞で全反射顕微鏡を用いて開口放出現象を観察するという実験に取り組んでいるが、観察可能なレベルまでに蛍光標識したMelanophilinを高発現させると、本来局在する分泌顆粒膜以外にも局在してしまうことから、Melanophilinタンパク質をより強い蛍光を発するタンパク質と融合させるなどの工夫をする必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度は、ほぼ予定通りに実験計画は進んだが、全反射顕微鏡を用いた生細胞の開口放出観察、共焦点顕微鏡を用いた対照分子の細胞内局在実験などを完結させる必要上、次年度に実際のデータを出すための経費を残した。 (使用計画) 本年度は、Melanophilinに関する研究は順調に進んだが、論文発表をするためにその完成をまず優先させる。次に、皮質アクチン内で機能するもう一つのRab27エフェクターExophilin-8と、Melanophilinの機能関係を中心に研究を進めたい。次年度は、計画通り、実験データを集積させるために必要な、マウス個体・組織の生理学的解析に必要な試薬、遺伝子関連試薬、生化学・組織化学試薬、細胞培養など、消耗品購入を中心に使用する。情報収集・交換、成果発表のための学会参加費用・旅費にも充てる予定である。
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