日常生活において、香りは生活の質を高める重要な要素のひとつとなっている。視覚が光を受容するたった4種類の受容体で構成されるのに対して、嗅覚は、ヒトでは396種類もの受容体がある上、各々が多数の匂い物質を受容する。さらに嗅覚受容体には多型があり、遺伝型により匂い応答性が異なる。こうした嗅覚の複雑さが、匂いを研究対象として扱う上での挑戦性を高めており、個々人の好みや目的に合いかつ周囲と調和のとれた香りの創出を阻んできた。本研究では、受容体と匂い物質の対応関係がシンプルな“ムスクの香り”をモデルとして、個々の嗅覚受容体が担う匂いの質と受容体の遺伝的多型が匂いの感じ方に及ぼす影響を解明した。
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