研究実績の概要 |
RNAの後天的修飾による遺伝子発現調節機構「エピトランスクリプトミクス」に関わる遺伝子として、ALKBHファミリー分子は酸化的脱メチル化反応により関わると考えられており、現在までにALKBH1,3,5,8,FTOがRNA修飾塩基に対する酵素活性を有していることが報告されている。しかし酵素活性の全貌は明らかになっておらず、基質の同定はエピトランスクリトミクスの詳細な解明においても重要な知見になると考えられる。 前年度においてリコンビナントタンパク質を用いたALKBH ファミリーの新規基質探索実験では新たな反応機構を明らかには出来ていなかったが、反応条件を見直し再度検討を行った。 結果、これまでRNA に対する反応が報告されていないALKBH4 が200 ヌクレオチド以下のRNA において検出されるmchm5U量を低下させることが示唆された。これまでのmchm5U についての知見は、特定tRNA のゆらぎ位置に存在し、同じくALKBH ファミリーの一員であるALKBH8 によるmcm5Uの酸化反応で生成することが報告されていたが、今回さらなる反応経路の存在を示した。また、これまでtRNA におけるhm5C 生成を担うとされていたALKBH1 はrRNA においてもhm5C 生成に寄与している可能性が結果として得られた。ならびに、mRNA におけるm6A 脱メチル化を触媒しmRNA の機能調節に関与するALKBH5 はmRNA 意外のrRNA やsmall RNA においても検出されるm6A に対しても脱メチル化している可能性が示された。 このようにALKBH リコンビナントタンパク質と質量分析を用いた検討から新たなRNA エピトランスクリトミクス制御経路の存在を示唆する結果が得られた。現在、がん細胞やノックアウトマウスを用いて分子病態的および生理的機能についての検討を行っている。
|