研究課題/領域番号 |
18K14659
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 |
研究代表者 |
石井 宏和 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 特任助教 (70743409)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 二光子顕微鏡 / 光操作 / ライブイメージング / 神経・グリア回路網 / オータプス / 超解像 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2光子顕微鏡と2光子励起を用いたオプトジェネティクスの手法により、オータプス初代培養標本における単一神経・グリア回路網の活動伝搬様式を時空間的に可視化・解析する新規イメージング手法の構築である。本年度はまず、北海道大学からの所属研究室の移設に伴った光学系および細胞培養系の再セットアップを行なった。オータプス初代培養標本における神経細胞やアストロサイトの自発的な細胞内カルシウム濃度変動の伝搬様式をライブイメージングすることに成功するなど、研究室移設前の結果を再現できることを確認した。また、神経・アストロサイト間の神経伝達物質に由来するカルシウム濃度上昇を可視化するためにグルタミン酸感受性プローブの使用検討を進めた。 一方、オータプス初代培養標本における活動伝搬様式をナノスケールから細胞スケールで階層的に可視化解析することを目的に、超解像2光子STED顕微鏡の高度化・応用を行なった。この超解像2光子STED顕微鏡は昨年度に申請者が筆頭著者として報告したシステムで(Ishii et al., Biomedical Optics Express 2019)、「日本光学会 光学誌が選ぶ2019年の日本の光学研究を代表する成果」に選定された(石井ら, 光学2020)。本年度はこの超解像2光子STED顕微鏡に新たな検出器を導入するなど更なる高度化を進め、特に生物試料観察において問題となるSTED光照射に起因するバックグラウンドを低減させることに成功した(論文投稿準備中)。また、ライブ観察用のチャンバーを検討・設置するとともに、超解像2光子STED顕微鏡に適した蛍光プローブの探索を行いながら超解像ライブイメージングへの応用と観察条件の検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究室の移設に加え、新型コロナ感染拡大による研究活動の制限が重なり、実験を行えない期間が想定以上に長引いた。また顕微鏡光学系の再構築に関して予期していない問題が発生し、その解決に時間を要した。そのため、当初の予定よりもイメージングデータを取得することが困難となった。一方で、既に顕微鏡光学系や細胞培養系の構築、蛍光プローブ探索の項目についてはこれまでの研究期間でほぼ目的を達成している。研究期間を延長してイメージングデータを取得する時間を確保すれば、研究計画を完遂できると期待されるため、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、本研究遂行の要となる顕微鏡光学系の構築などはほぼ完了しているため、次年度はオータプス初代培養標本における特定の細胞を局所光刺激により活性化させ、その活動が伝播する過程や、伝播の周期性などを時空間的に可視化解析することに重点を置いて研究を進める。神経細胞・アストロサイト回路網の光刺激に対する応答特性を明らかにすると共に、本研究で構築するイメージング手法の有用性を評価することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室の移動や新型コロナ感染拡大に伴った研究活動の制限などが重なり、実験を行えない期間が想定以上に長引いた。そのため、実験関連の消耗品の使用頻度が減った。また、参加した学会等がオンライン開催となったため旅費を使用しなかった。次年度は主に細胞培養やイメージング関連の消耗品、学会参加や研究打ち合わせのための旅費として使用する予定である。
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