人工的に蛋白質の機能と構造を創出できるようになることは、学問的な進化だけでなく創薬をはじめとした人類の福祉への応用が大きく期待される。当研究は計算科学を用いて蛋白質の構造と機能を創出するためのデザイン理論の探索と実証を目指すものである。その実践の例として、特に「ヘム輸送機能を持つ蛋白質のデザイン」を達成することを目標とした。 ヘム結合タンパク質の多くはヘムと強く結合し、鉄原子上で酸化還元反応や化学反応を触媒する。このとき反応場を形成するためにヘムの結合部位はそのヘム結合蛋白質の奥深くに結合していることが多い。また、使用するアミノ酸もヒスチジン・メチオニン残基が大多数を占めている。一方でヘム輸送能を持つ蛋白質はチロシン残基でヘムの鉄原子と結合し、かつヘムの溶媒露出面積が多いことが統計的な解析で判明した。さらに、天然に存在するヘム輸送蛋白質にはほとんどがβシートで構成されるIsd蛋白質(例:2O6P)の他に、αヘリックスが豊富なChaN蛋白質(例:2G5G)が存在し、これらのヘム結合部位周辺の5.0オングストロームの残基を新規ヘム輸送のパーツとして取得した。 これらのパーツを用いて、Topobuilderと呼ばれる蛋白質のテンプレートフリーな蛋白質構造ビルドソフトウェアを用いて機能モチーフを安定な新規蛋白質構造ドメインに取り込むことに取り組んだ。現在、3次元構造上でトポロジーのアセンブリを行っている。今後はRosettaのflexible主鎖サンプリングを行い、この構造を構成しうる安定なアミノ酸配列をデザインする予定である。
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