研究課題/領域番号 |
18K14661
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
伊藤 由馬 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (70803245)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 1分子計測 / 生細胞イメージング / 相分離 / 細胞核 |
研究実績の概要 |
本研究は細胞核内におけるタンパク質の液液相分離の性質に注目し、生細胞1分子イメージングを用いて、核内タンパク質の粘弾性挙動を直接定量解析することを目的としている。特に局在化超解像技術と高輝度蛍光色素を用いることで、生細胞内の1分子追跡を数ミリ秒から百秒程度の時間スケールに拡張し、幅広い時空間スケールにおける粘弾性挙動を解析する。本年度は、核内タンパク質の蛍光標識および安定発現細胞株を作製するとともに、相分離する核内タンパク質の1分子イメージングを行い、輝点追跡から粘弾性挙動の定量解析を行った。まず、複数候補の高輝度蛍光色素のNHS-esterと、Halo、SNAP、CLIPタグ基質から蛍光リガンドを作製し、各タグを融合したヒストンH2Bを定常発現するHeLa細胞を用いて、蛍光1分子の特性を測定した。安定した蛍光1分子像が得られる組み合わせを確定した。染色効率がタグによって異なる等の要因も見出されたため、細胞調製を含めた観察条件の改良を進めている。また、核小体タンパク質NPMを定常発現するHeLa細胞を用いて生細胞1分子イメージングを行い、リアルタイム撮影では十数ナノメートル精度の軌跡追跡と、高速撮影による輝点検出に成功した。軌跡の平均二乗変位から異常拡散モデルにより得られた拡散係数等は、以前報告された、核抽出液を用いたマイクロレオロジーによる測定結果と良く一致し、本計測法の再現性が得られた。一方で、ヘテロクロマチンタンパク質や転写関連因子では、核内構造体との安定した結合に由来すると考えられる動態が大半を占め、相分離由来の動態としての検出が困難であったため、相分離に関わる天然変性領域に絞った解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観察系の構築がほぼ完了し、in vitro実験で報告された核内タンパク質の粘弾性挙動が、生細胞内で同様に定量できたことは当初の計画以上であった。一方で、一部の核内タンパク質では相分離の測定が困難であったが、最近相分離に重要なタンパク質領域の同定が進み、その領域に絞った観察が可能であるため、研究全体としては概ね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
転写関連因子の相分離に関わる天然変性領域にタグタンパク質を融合して、安定発現細胞株を作製し、蛍光1分子イメージングと定量解析を行う。変異体や阻害剤を用いた解析により、粘弾性挙動と生物学的機能との関連を明らかにする。
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