研究課題
若手研究
膜透過性ペプチドR8の直接膜透過機構を明らかにする事は、薬物送達技術の向上において重要な課題である。本研究では、R8が脂質ラフトを足場として利用し、ラフト-非ラフト間の境界領域から細胞内に流入する仮説を立てた。まず、錯体脂質を用いて細胞膜上に安定した人工脂質ラフトの構築に成功した。次に、ラフト形成によって細胞膜上で局所的に脂質パッキング度合いが上昇していることがわかった。R8の細胞内流入の観察により、R8の膜透過は複合的な要因によって支配されている可能性が示唆された。
ペプチド化学、生物物理化学
革新的な新薬の創生には、細胞の膜表面分子だけでなく細胞内分子を標的とした薬物送達技術の向上が極めて重要である。細胞膜透過性ペプチドは直接膜透過によって効率的に細胞内へ分子を送達できる反面、送達可能な積荷分子にサイズ制限がある。膜透過機序が解明されれば、細胞内送達が可能な化合物の幅が広がるだけでなく、膜透過しやすい薬物の性質に関する知見が得られる。また、効率的な薬物の送達支援ツール開発においてもその根底にある機序解明に関する基礎研究が必要不可欠である。