研究課題
平成30年度はターゲットとする酵素タンパク質の熱安定化変異体の作製及び熱安定性解析と計算機を用いた巡回対称オリゴマータンパク質構造デザインを行った。1. ターゲットとする酵素タンパク質の熱安定化変異体の作製及び熱安定性解析ターゲット酵素タンパク質の熱安定化変異体をタンパク質構造の計算機デザイン手法を応用して予測した。遺伝子工学的手法により予測した変異体を作製し、変異体酵素タンパク質を精製、円偏光二色性分光測定による熱安定性解析と酵素活性測定を行った。その結果、複数の熱安定化変異を見つけることができた。この熱安定化変異をすべて導入した多重変異体を作製したところ、酵素活性を失うことなく、最大で10℃熱安定性を向上させることができた。2. 計算機を用いた巡回対称オリゴマータンパク質構造デザインサイズが小さく立体構造がシンプルな人工タンパク質をターゲットとして、2回対称から7回対称までのオリゴマータンパク質構造の計算機デザインを行った。その結果、5回対称、6回対称、7回対称のオリゴマー構造について、オリゴマー構造デザインに適した相互作用面面積を持つ構造モデルが生成できた。これらのオリゴマー構造についてデザインしたタンパク質のアミノ酸配列をコードした合成DNAを購入し、大腸菌タンパク質発現系を用いて購入した合成DNAからデザインタンパク質を生合成した。生合成したタンパク質をアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより精製し、ゲルろ過クロマトグラフィー-多角度光散乱(SEC-MALS)実験による分子量・会合数の解析を行った。その結果、今回のデザインでは目的の会合数のオリゴマー構造を得られなかった。
2: おおむね順調に進展している
ターゲット酵素タンパク質の変異体作製とその酵素活性及び熱安定性測定を通して、側鎖構造の計算機デザイン手法を改善する上で有用なデータを多く取得することができた。また、シンプルな構造のデザインタンパク質を基にオリゴマー構造デザインを行うことで、今後のデザインの課題がわかった。
令和1年度は、平成30年度の研究を通して熱安定化できたターゲット酵素タンパク質変異体の立体構造を明らかにすることで、酵素タンパク質の熱安定化メカニズムの詳細な理解を深めるとともに、計算機オリゴマー構造デザイン手法の改良を行う。
本年度は次年度に生化学実験を行うタンパク質を設計するために、計算機実験に比較的多くの時間を使った。そのため、当初、生化学実験に用いる予定だった消耗品費が次年度にまわってしまった。本年度は、生化学実験を中心に実験を進めていく予定であり、以下の研究費使用を計画している。【消耗品費】 蛋白質発現系構築等のための合成DNA購入費、酵素類、培地用試薬、生化学・分子生物学実験試薬、有機・無機化学実験試薬、結晶化用試薬等を含む試薬・酵素類代、試薬瓶等のガラスラス器具、蛋白質精製用のカラム類、計測機器用消耗品等を含む実験器具類代、チップやメスピペット、チューブ、シリンジ等の使い捨てのプラスチック用品代として合計で約270万円の消耗品費が必要である。【旅費】細胞を創る研究会等における研究成果発表・情報収集、共同研究打合せや先端機器利用実 験のための国内旅費として約10 万円の経費が必要である。【その他】 共同利用機器使用料、国際誌投稿論文の英文校閲委託や論文掲載費用(Article Processing Charge)等として約13 万円の経費が必要である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (1件)
Journal of Japanese Biochemical Society
巻: 91 ページ: 255-259
10.14952/SEIKAGAKU.2019.910255
ACS Synthetic Biology
巻: 7 ページ: 1381-1394
10.1021/acssynbio.8b00007
Seibutsu Butsuri
巻: 58 ページ: 313-315
10.2142/biophys.58.313