令和元年度は、計算機オリゴマー構造デザイン手法において、ウェット実験面で抱える課題を解決するために、デザインしたオリゴマーを一度に試験する新手法の開発に取り組んだ。 昨年度までに計算機を用いてオリゴマー構造を生成する手法を開発した。しかしながら、昨年度の報告書に記載した通り、この手法を用いてデザインしたタンパク質を大腸菌で発現させ、会合状態を解析した結果、目的の会合数のオリゴマー構造は得られなかった。開発した手法によりデザインしたオリゴマー構造自体は多数生成できるものの、実際に実験的に検証することができるデザインは精製したデザインオリゴマー構造のうちごく一部である。デザインした構造の中から目的のオリゴマーを形成するものがどの配列で、どれだけの数あったかを調べる必要があると考えた。 そこで、令和元年度は、この課題を根本から解決するために、デザインした膨大な数のオリゴマー構造すべてが混ざった状態のまま、会合状態や熱安定性など、タンパク質が持つ物質的な性質を反映した指標によって一度にスクリーニングする実験系の開発に試みた。 ターゲットとするタンパク質に対してオリゴマー化デザインを施した場合に生成されるタンパク質のアミノ酸配列は互いに非常に似ており、多数のそれらが混ざった状態である場合、目的の物性を示したタンパク質を特定することは難しいと考えられた。そこで、個々のタンパク質に異なる配列のペプチドバーコードをつけることで、互いに似た配列をもつタンパク質を物性で選抜し、特定する方法の開発を行った。
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