研究課題/領域番号 |
18K14672
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
古田 芳一 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 講師 (40613667)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / エピゲノム / メチローム / 制限修飾系 |
研究実績の概要 |
バクテリアのゲノムにおけるエピジェネティック修飾は、大部分がDNAのメチル化によるものであり、真核生物同様、遺伝子発現制御や表現型に影響する事例が知られている。菌種間及び菌株間でゲノムのメチル化状態(メチローム)に大きな多様性があることから、メチロームの多様性が、ゲノムの多様性同様、バクテリアの表現型の多様化を引き起こし、菌種の適応進化に貢献すると考えられる。しかし、バクテリアのメチロームはあまりに多様であるため、メチロームによる表現型の変化の分子メカニズムの網羅的解析が困難であった。 本研究では、バクテリアのメチロームによる表現型の変化を網羅的に解析するため、ワンハイブリッド法を用いて、新たなターゲット配列を持つDNAメチル化酵素を開発し、10の5乗通り以上のゲノムのメチローム多様性を持つ大腸菌集団を作成する。メチロームの変化によって表現型が大きく変化した株を選択し、オーミクス解析によって、DNAメチル化によって制御される遺伝子を網羅的に検出する。DNAメチル化やプロモーターの位置、近傍遺伝子の発現量変化、DNA結合タンパク質の認識配列などの情報を統合し、バクテリアのエピゲノムによる遺伝子発現制御、表現型多様化の分子メカニズムを明らかにする。 平成30年度は、このうちワンハイブリッド法を用いた新たなターゲット配列を持つDNAメチル化酵素の開発系の構築を進めた。ランダムに変異を導入したDNAメチル化酵素の中から、野生型のターゲット配列から1塩基異なる配列に結合する候補遺伝子が実際に選抜された。今後期待通りのメチル化活性を持つかを確認し、さらに多くの異なるターゲット配列のメチル化活性を持つDNAメチル化酵素の選抜を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ワンハイブリッド法を用いた新たなターゲット配列を持つDNAメチル化酵素の開発系の構築を実施した。はじめに、ターゲット配列が既知の野生型のDNAメチル化酵素についてこの系を試し、想定通りの結果をもたらす薬剤濃度等の条件検討を行なった。次に、この野生型のDNAメチル化酵素に変異をランダムに導入し、この系を用いることで、野生型のターゲット配列から1塩基異なる3種類の配列に結合する候補遺伝子が実際に選抜された。このことから、このワンハイブリッド系が機能していることが確認された。今後期待通りのメチル化活性を持つかを確認し、さらに多くの異なるターゲット配列のメチル化活性を持つDNAメチル化酵素の選抜を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
ワンハイブリッド系によって選抜された候補遺伝子について、DNAメチル化活性を有するかどうかをPacBioシークエンサーを用いて確認する。その後、さらに多様なターゲット配列に結合し、DNAメチル化活性を有するDNAメチル化酵素を発現する遺伝子を選抜し、多様なメチロームを持つ大腸菌集団の構築を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に必要とした試薬を購入するには小さい額が残ってしまったため、次年度使用額として計上した。平成31年度請求分の助成金と合算することで、高額の試薬の購入に充てる計画である。
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