研究課題/領域番号 |
18K14676
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
黒木 俊介 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (50735793)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エピゲノム / 性決定 |
研究実績の概要 |
哺乳類の「性」はY染色体の有無という先天的ゲノム情報によって決まると理解されてきた。一方、後天的ゲノム情報であるエピゲノムの性決定への関与はよく分かっていない。本研究では、「エピゲノムによる哺乳類の性決定」という知見を発展させるべく、性決定遺伝子Sryを制御する新規酵素と、制御酵素をSry遺伝子にリクルートする因子の同定を目指した。 計画1: これまでの研究から、抑制性ヒストン修飾マークH3K9の脱メチル化酵素JのうちJmjd1a とJmjd1b がSryの正の発現に機能相補することを明らかにしていた。今年度は、Jmjd1a/Jmjd1bが実際にSryの遺伝子座のH3K9メチル化レベルを制御することを検証した。Jmjd1a/Jmjd1b を二重欠損した性決定期 (胎生11.5日目) のマウスから生殖腺体細を精製し、ChIP-qPCR法によりSry遺伝子座のH3K9レベルを調べた。結果、二重欠損マウスでは、Jmjd1aまたはJmjd1b の欠損マウスと比較してH3K9レベルが顕著に増加したことから、Jmjd1a/Jmjd1bが協調してSryの遺伝子座のH3K9を脱メチル化することが明らかになった。 計画2: Sry 遺伝子座の発現とそれに引き続く雄への性決定を制御する新規因子を探索する目的で、申請者がこれまでに構築したセルトリ前駆細胞の遺伝子発現データから、E11.5日に一過性に発現する転写因子XとYを選別した。それぞれの遺伝子について遺伝子欠損マウスをCRISPR/Cas9の受精卵エレクトロポレーション法により作出した。遺伝子Yについては個欠損マウスが胎生中期で致死となることが報告されていることから、floxマウスを作成しNr5a1-Cre Tgマウスと交配することで生殖腺特異的な遺伝子Yの欠損マウスを作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画1については、Jmjd1a/Jmjd1bの2つが重複的にSry遺伝子座のH3K9メチル化レベルを制御することを示唆するデータをえることができた。 計画2については、遺伝子XとYの欠損マウスの作出までは完了した。しかし、年度末に所属研究室が移転することとなり、それに伴って動物実験も一時的に停止せざるを得なかったため、作出した欠損マウスの解析までは至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
計画1について、Jmjd1a/Jmjd1bが性決定期の生殖腺体細胞のSry遺伝子座に集積することを明らかにするため、Jmjd1aとJmjd1bに対する抗体を用いてChIP-qPCRまたはChIP-Sequenceを行う。 計画2について、まず遺伝子XとYの欠損マウスのXY型個体に雄->雌への性転換が引きおこされるかを組織学的に解析する。次に、E13.5日の生殖腺における雌雄の分化の度合いを、Sox9 (雄マーカー)とFoxl2 (雌マーカー)の陽性細胞の比を用いて定量する。平行してE11.5日の生殖腺におけるSry発現をqRT-PCRやRNA-Seqenceにより明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究室の移転に伴いマウスの飼育を一時停止したため、飼育施設の使用料と動物実験に関わる試薬の費用が減り、結果として次年度使用額が生じた。 次年度使用額を実験マウスの再度の飼育立ち上げに関わる試薬にあて、研究計画全体の円滑な進行をはかる。
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