研究課題/領域番号 |
18K14678
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
菅野 茂夫 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (60726313)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 遺伝子重複 / 植物ゲノム / ライブラリ / ゲノム編集 / python |
研究実績の概要 |
pythonを利用した各遺伝子を破壊するためのソフトウェアを発展させ,長鎖欠失用のソフトウェアを作成し,発表を行った(田井ら,2018年植物学会).具体的には,各遺伝子の上流,下流のgRNAのうち,オフターゲットが最も少ないgRNAを10本取り出し,リスト化した.また,シロイヌナズナにおいて知られている全タンデム重複遺伝子に対して,タンデム重複遺伝子をそれぞれ欠失させるようなgRNAのセットを構築し,リスト化した. リスト化したgRNAセット(2本)を同時に発現させるために,tRNAとgRNAを結合させて複数gRNAを同時発現させるシステムを利用した.本システムを利用することで,1つのオリゴDNAの中に2つのgRNA配列を含むような170 bpのオリゴDNAを設計した.オリゴDNAは超並列遺伝子合成によってプールとして合成した.プールとして合成したオリゴライブラリをベクターに導入するには至っていないが,プルーフオブコンセプトとして,1つのオリゴに対してベクター構築を行い,合成したオリゴを導入するためのベクター構築のプロトコールを作成した. 作成したベクター構築プロトコールを用いた方法で,欠失用ベクターを構築した.具体的には,奈良先端科学技術大の山口暢俊助教との共同研究によりYUC3 promoterの欠失を行い,その機能解析によりプロモーター欠失の効果が認められた(Yamaguchi et al. 2018 Nature Communication).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in silicoデザイン用のソフトウェアの構築は終了し,リスト化されている全タンデム重複遺伝子を欠失させるためのオリゴライブラリーも構築し終えた.植物体の作製ができていないので,その点は当初の予定より遅れているが,これは,立命館大学の共通植物部屋の温度管理システムの不具合により,植物が健全に育たなかったためである.「今後の研究の推進方策」で述べる通り,2019年度に関してはこの問題は起こらないと予想される.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は,産業技術総合研究所・生物プロセス部門・植物機能制御研究グループに異動した.本研究グループは,シロイヌナズナの転写因子をほぼ網羅するCRES-Tラインを作出した実績を持つ.本研究グループが有するリソースを利用すれば,タンデム重複遺伝子をひとつずつ破壊していき,変異体ライブラリー化していくことも容易であると推察される.2018年度に構築したソフトウェア,およびライブラリーに加えて,各タンデム重複遺伝子群を破壊するためのベクターを構築し,順次植物体の作出を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
「研究の進捗」にも記載したが,2018年度,立命館大学において植物の培養室の状況が悪化した.気温が50℃になり植物がすべて枯死したり,30℃になりシロイヌナズナの種子の発芽率が著しく低下したり,といった問題が発生した.したがって,今年度の研究のほとんどは,in silicoによるコンピューターでの実験であり,消耗品などを購入する必要が無かった. それに加えて,2018年度の中旬には,研究代表者が2019年度に産業技術総合研究所に異動し,そこで植物の培養を大量に行えるとわかった.したがって,次年度に予算を移した方が,研究計画の実行をスムーズに行えると判断したため.
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