研究課題
Hi-C法は、染色体ドメイン(TAD)や核内コンパートメントといったMb単位の階層のクロマチン構造をゲノムワイドに解析できる手法である。これを個々の細胞で行う1細胞Hi-C解析は画期的だが、解像度が低くコンパートメント分布の算出は難しい。一方、我々は、哺乳類培養細胞を用いた1細胞ゲノムワイドDNA複製タイミング解析法scRepli-seqの開発に成功した。複製タイミング分布はコンパートメント分布と強く相関するため、scRepli-seqは1細胞でコンパートメント分布を推定できる強力な手法である。そこで、本研究では、マウスES細胞分化と初期胚発生に伴うscRepli-seqの経時的解析を行い、発生、分化に伴う三次元ゲノム構造変化を推定することを計画した。前年度に引き続き、今年度も着床前初期胚を用いたscRepli-seq解析を行なった。4細胞期および8細胞期胚のS期全域の細胞を回収してscRepli-seqを行なったところ、これら2つのステージでは複製プロファイルが極めて類似していることが分かり、この時期に核内コンパートメント分布がほとんど変化しないことが示唆された。現在、卵割期の他のステージの解析を進めている。また、scRepli-seqデータからは細胞周期のS期の時期を算出できるが、4細胞期胚では1つの胚内に存在する4つの細胞の細胞周期がほぼ同調しているのに対し、8細胞期では細胞周期が大きくバラつき始めた胚が観察された。8細胞期胚は4細胞期胚よりも細胞分化が進行していると考えられることから、このバラつきが細胞の分化状態と相関しているとすれば興味深い。これを検討するために、現在、8細胞期胚における同一細胞からのscRepli-seqとscRNA-seq (RamDA-seq)を試みている。
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