研究課題/領域番号 |
18K14685
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
松岡 和弘 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員(移行) (60617140)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ウイルス / HIV / プロテインアレイ / ユビキチン化 / 宿主防御因子 / Vif / APOBEC3 |
研究実績の概要 |
HIVが持つアクセサリータンパク質は、宿主のCullin RING型 E3ユビキチンリガーゼ複合体(CUL複合体)をハイジャックして、ウイルス感染に対して防御的に働く『宿主防御因子』をユビキチン・プロテアソーム系による分解を誘導することで、ウイルスの増殖や生存に有利な細胞環境を構築している。しかし、研究が進んでいるアクセサリータンパク質の一つであるVifでさえ既知のAPOBEC3ファミリー(A3)以外のVif依存的にユビキチン化される宿主タンパク質の全容は未解明なままである。 そこで本研究は、プロテインアレイを用いたユビキチン化タンパク質解析法の基盤技術を構築し、Vif依存的にユビキチン化されるタンパク質の同定・解析を行い、Vifを介したHIV感染機構の分子基盤を明らかにすることを目指している。 当該年度において、まずユビキチン化タンパク質解析法の基盤技術であるVif依存的なA3のユビキチン化を行うin vitroユビキチン化再構築系の構築を行った。 1)in vitroユビキチン化再構築系:Vif/CBF-b/ELOB/ELOC複合体は、大腸菌発現系で4者複合体として共発現を行い、粗精製・イオン交換/ゲルろ過クロマトグラフィーを行うことで、これまで技術的に困難であった高純度のVif複合体の精製に成功した。さらに、精製したCUL5複合体、E1、 E2、Vif複合体およびA3Gを混合し最適化させたin vitro再構築系でVif依存的なA3Gのユビキチン化を検出することができた。 2)VifのN末端領域がA3結合において重要な役割を担うことが知られている。一方で、高度に保存された領域を含むC末端領域の役割は不明である。一連のVif C末端欠損変異体を用いて、細胞内でA3との結合や分解に重要な『Vif機能領域』の同定に成功し、in vitroユビキチン化再構築系でも立証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、これまで技術的に困難であった高純度なVif/CBF-b/ELOB/ELOC複合体を発現・精製系、A3のin vitroユビキチン化再構築系の構築に成功した。また、Vif C末端欠損変異体を用いたA3中和機能解析を行なったところ、細胞内でA3との結合や分解に重要な『Vif機能領域』の同定に成功した。さらに、『Vif機能領域』がA3との結合や分解に重要であることを、in vitroユビキチン化再構築系でも立証することができた。以上のことから、ヒトプロテインアレイを用いたユビキチン化タンパク質解析法の基盤技術の構築を本年度までに進めることができた。本研究に関する成果発表について、2019年度(5月)に米国で開催される Cold Spring Harbor Laboratory -Annual Retrovirus- Meeting においてポスター発表に採択され、発表予定である。さらに、一連の研究成果について、第66回日本ウイルス学会学術集会、第32回日本エイズ学会学術集会においても口頭発表を行い情報発信するとともに、討論する機会も得ることができた。これらことからも、当年度の本研究課題は、総じておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、プロテインアレイを用いたユビキチン化タンパク質の解析に必要不可欠である高効率で特異性が高いより最適化したin vitroユビキチン化再構築系の構築に力を注ぐ予定である。具体的には、近年、CUL複合体においてユビキチン結合酵素(E2)から標的基質への最初のユビキチン転移を仲介することが報告されたE3ユビキチンリガーゼARIH2をA3のin vitroユビキチン化再構築系に組み入れることを予定している。予備実験として、ARIH2の高純度精製に成功したので、A3のin vitroユビキチン化再構築系への至適化を試みる。最終的には、ヒトプロテインアレイを用いたユビキチン化タンパク質解析法を駆使した、Vif依存的にユビキチン化をされるタンパク質の探索・解析を行い、Vifを介した宿主タンパク質のユビキチン化機構の全容解明を目指したい。次年度においても学会発表や学術論文として研究成果を積極的に発表していきたい。
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