研究実績の概要 |
HIVがコードするアクセサリータンパク質は、宿主のCullin-RING型E3ユビキチンリガーゼ(CRL)複合体を利用して、ウイルス感染に対して防御的に働く『宿主防御因子』をユビキチン化することで、ウイルスの増殖や生存に有利な細胞環境を構築している。しかし、研究が進んでいるアクセサリータンパク質の一つであるVifでさえ既知のAPOBEC3ファミリー(A3)など以外のVif依存的にユビキチン化される宿主タンパク質の全容は未解明なままである。本研究は、プロテインアレイを用いたユビキチン化タンパク質解析法の基盤技術を構築し、Vif依存的にユビキチン化されるタンパク質の同定・解析を行い、Vifを介したHIV感染機構の分子基盤を明らかにすることを最終目標としている。近年、RING-in-between-RING (RBR) E3ユビキチンリガーゼであるARIH2 がCRL複合体においてユビキチン結合酵素(E2)から標的基質への最初のユビキチン転移を仲介することが報告された(Scott et. al Cell 2016)。そこで最終年度は、in vitroユビキチン化再構築系を用いてVif依存的なA3のユビキチン化におけるARIH2の役割を明らかにした。 1)ARIH2は、Vif-CRL5複合体と協調的に働くことで、効率的なA3G, cpzA3H, A3C, A3F CTDのモノユビキチン化に関与することが明らかになった。 2)A3G, cpzA3H, A3C, A3F CTDのポリユビキチン化には、ARIH2 / UBCH7を介したモノユビキチン化とUBCH3を介したユビキチン鎖の伸長が重要な役割を果たすことが明らかになった。 以上の結果から、ARIH2を用いることで高効率なin vitroユビキチン化再構築系を確立することができた。
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