研究実績の概要 |
2018、2019年度と、Support Vector MachineにペプチドとGタンパク共役型受容体(GPCR)間の相互作用を学習・予測する予測システムを構築し、その中から相互作用に重要な受容体側とペプチド側の残基ペアを推定する手法を構築してきた。また、2019年度の検証では、共結晶構造の解かれているNTR1とNeurotensinとの相互作用因子を推定し、推定された相互作用因子の中に共結晶構造中で水素結合を作っている残基ペアが含まれていることを確認している。 2020年度は、相互作用因子抽出法をSubstance Pとその既知受容体に適用した。Substance Pは、NK1Rに加えて、分子系統樹解析では遠縁のMRGX2も活性化することが知られ るペプチドである。このペプチドが、NK1R, MRGX2をともに活性化する根拠となる相互作用因子を本抽出手法を用いて抽出し、MRGX2のP1.35、F3.24、G4.61、及びNK1RのW1.35、Y3.24F, G4.61がSubstance Pの活性の有無を決めていることが示唆された。また、MRGX2と類縁のGPCRであるが、Substance Pを認識しないGPCRであるMRGX1では、それぞれアライメント上で相同な位置の残基がI1.35、L3.24、 W4.61と、側鎖の分子量の大きく異なる残基であった。そこで、I1.35P、L3.24F、W4.61Gの3点変異を導入し、MRGX1のSubstance P活性を測定した。その結果、3点変異により、野生型MRGX1では一切見られなかったSubstance P活性が、MRGX2の40%程度のEmaxの値で得られることが分かった。上記の結果より、本研究で構築した相互作用因子抽出法がGPCR-ペプチド間の相互作用因子を十分に説明可能であることが示された。
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