研究課題/領域番号 |
18K14689
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
新木 和孝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (60514255)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | タンパク質 / 翻訳後修飾 / 質量分析測定 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
タンパク質の翻訳後修飾は、リン酸化修飾を代表として、細胞の増殖の調節や酵素の活性や細胞内シグナル伝達などに関わり、細胞内の恒常性を維持する上でも重要な役割を果たしている。このような翻訳後修飾は、遺伝子解析ではなくタンパク質を直接解析する必要がある。そのため、質量分析測定技術が、翻訳後修飾を大規模に解析するに際して大きな役割を果たす。 プロテオミクスの分野では、その測定機器の精度や感度の向上と技術進展により、定性解析から定量解析に向けた動きがあり、発現量や翻訳後修飾を含めたタンパク質関連情報の定量法が開発されている。翻訳後修飾の中でも、活性酸素等の発生による酸化ストレスが多岐に渡る生命現象や疾患とも密接に関連し、注目が集まっている。例えば、生活習慣に起因する動脈硬化や糖尿病等の疾患、加齢に伴う生体機能の低下や神経変性疾患、がん発生の原因(酸化修飾)とも密接に関与している。また、生物学的にも重要な役割を果たしている多くの生体因子の活性が、その活性中心付近などに存在する酸化還元反応性の高いシステイン残基の酸化還元状態で制御されていることが報告されている。シグナル伝達に関与する因子としてHIF、KEAP、Src、代謝に関わるGAPDH、PKMなども、その活性中心近傍のシステイン残基の酸化還元状態の変化に応じて、その活性が制御されている。これまでの研究では、この酸化還元やリン酸化状態といった異なる翻訳後修飾状態の連関性やクロストークに関して、体系的に計測定量する研究が十分になされていない。 そこで本研究では、酸化修飾とリン酸化シグナルネットワークの動的なクロストークをとらえるための定量解析系の構築と同時に、直接的なクロストークを検出するためのタンパク質間相互作用同定技術の開発を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、異なる翻訳後修飾のクロストークを体系的に計測する分析技術として、両者の直接的なクロストークを検出するためのタンパク質間相互作用同定技術の開発を進めた。ここでは、2点のアミノ酸を修飾可能なクロスリンカーを用いて、修飾部位を質量分析測定によりアミノ酸レベルで同定し、異なる2つのタンパク質のどの領域とどの領域が近接しているかを同定する技術の構築を進めた。モデルタンパク質を対象として、クロスリンカーの種類の検討、クロスリンカー処理されたペプチドのみを濃縮する過程の条件検討を経て、比較的再現性の高い技術が確立することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
直接的なクロストーク検出技術の生物学的再現性を検証する上でも、異なるクロスリンカーを用いた相互作用解析を引き続き検討する。それと同時に、異なる翻訳後修飾の状態を網羅性高く定量検出する解析系構築をすすめ、細胞状態を検出する汎用技術として確立する。これらの技術を統合して異なる翻訳後修飾の関連性を、直接的なクロストークとその状態の連携関係という二つの視点からの情報を取得していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗費購入に際し端数となる残額が生じ、完全に使用することができていなかった。次年度の消耗品購入に際し、端数が生じないよう努力する。
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