アクトミオシン (アクチン・ミオシンII複合体) は細胞内で収縮力を生成する実行因子であり、適時適所で機能することで様々な細胞動態を惹起し細胞応答や発生現象に寄与する。よって、アクトミオシンの収縮力を自在にコントロールできれば、多彩な細胞動態が混在する複雑な生命現象を紐解く有用な手段となる。そこで本研究では、近年急速に発展した光遺伝学的手法を用いてアクトミオシンを時空間的に制御することを目指し、光照射でミオシンII分子活性を調節するツールの開発を目的とした。 まず、ミオシンII機能を阻害する光遺伝学ツールを作製した。光照射で蛍光発色団から活性酸素種を発生させ標的タンパク質を不活化するCALI (発色団補助光不活化) 法に基づき、ミオシンII調節軽鎖とCALIに最適化された蛍光タンパク質SuperNovaを融合したノックインショウジョウバエを作出した。本系統を用いて、ショウジョウバエ生体内で局所的にミオシンIIを不活化したところ、細胞接着面伸長に必要なミオシンIIの時空間的な分布を新規に見出し、集団細胞に流動性を生み出すしくみの一端を明らかとした。これら成果は発生現象やがん細胞に見られる集団細胞移動の理解に寄与するものであり、Develomental Cell誌にて報告した。 次に、ミオシンII機能を活性化する光遺伝学ツールの確立を目指し、複数の光感受性タンパク質を検討した。まず、すでに報告されているCIBN/CRY2のシステムを用いて、光依存的に細胞膜にRhoGEFを移行させるプローブを作製し、ショウジョウバエ翅原基の細胞集団を収縮させることに成功した。CIBN/CRY2システムは光依存的結合に比べて解離の制御が難しい為、光依存的結合・解離を制御可能なシステムの導入を現在検討している。
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