研究実績の概要 |
オートファジーは代表的な細胞内分解システムであり、脊椎動物ではその実行に20種類以上のオートファジー関連因子群が関与する。しかし、これらの多種多様なオートファジー関連因子群がそれぞれ生体内でどの程度オートファジーに関与しているのか、どのような固有の生理機能を有しているのかはほとんど不明であった。 本研究では、各因子の生体内におけるオートファジーへの重要性と機能の解明を目的として、ライブイメージングや大規模な遺伝学的解析が容易なゼブラフィッシュを用いた解析およびマウスを用いた相補的解析を実施した。その結果、(1)オートファゴソーム形成に必須なオートファジー関連因子群を欠損させたゼブラフィッシュは受精後2週間以内に致死となり、浮袋の拡張不全およびサーファクタントを含有するラメラ体の成熟不全を認めること、(2)Vmp1欠損体は他のAtg欠損体とは異なり腸管や肝臓へリポタンパク質が蓄積すること(Morishita et al., eLife 2019)、(3)水晶体における大規模オルガネラ分解にはいずれのAtg因子も必須ではなく、サイトゾル中のリパーゼを用いた新たなオルガネラ分解系に依存することがわかった。マウスを用いた解析から、これらのいずれの新規機能も哺乳動物で保存されていることが判明した。 以上の成果は、オートファジー関連因子群の機能の多様性の理解およびオートファジーの発生過程における機能の解明に貢献すると考えられる。さらに水晶体におけるマクロオートファジー非依存的新規オルガネラ分解機構の発見は、脊椎動物における細胞内分解機構の包括的な理解につながると考えられる。
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