研究課題/領域番号 |
18K14701
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福田 真子 九州大学, 農学研究院, 特別研究員(RPD) (30750385)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | イネ種子 / RNA結合タンパク質 / 貯蔵タンパク質 / 共焦点レーザー顕微鏡 / RNA-IP / UVクロスリンキング |
研究実績の概要 |
イネ種子貯蔵タンパク質グルテリン及びプロラミンは、小胞体上で合成され、プロラミンは小胞体に蓄積し、グルテリンは液胞内へ輸送、蓄積される。これらの貯蔵タンパク質の異なる細胞小器官への蓄積は、小胞体からの輸送蓄積系の違いだけでなく、各貯蔵タンパク質 mRNAの小胞体領域への局在の違いによって制御されていると考えられているが、その詳細は不明である。 本研究は、プロラミンmRNAの小胞体領域への輸送に関与すると考えられるRNA結合タンパク質(RNA Binding Protein: RBP)-A, I, J, K, Qに焦点を当て、グルテリン及びプロラミンmRNAの小胞体への輸送と同タンパク質の蓄積との関連性を明らかにすることを目的としている。 今年度は、5種のRBPの胚乳細胞内局在及び各RBPのグルテリン及びプロラミンmRNAの小胞体輸送への関与を明らかにすることを目的として研究を行った。 イネ胚乳細胞内における、5種のRBP(RBP-A,I,J,K,Q)の局在を明らかにするために、RFPを連結させた各RBP遺伝子を野生型「キタアケ」に導入させた形質転換体イネを作出し、各RBPの局在を共焦点レーザー顕微鏡により調査した。その結果、RBP-A,RBP-J及びRBP-Qは核及びプロラミン蓄積部位である、Protein Body (PB)-ER膜に局在が認められた。 5種のRBPがグルテリン及びプロラミンmRNAの小胞体への輸送に関与するかを明らかにするために、同形質転換体種皮をUVクロスリンク(500mJ/cm2)処理し、RNA-IP及びRT-PCRを行った。その結果、RBP-A, RBP-I及びRBP-QはプロラミンmRNAへの関与を示すデータが得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各RBPの胚乳細胞内局在を明らかにするために、Okita教授の研究室にて、RFP及びGFPを各RBP遺伝子に連結させた形質転換体イネが作出された。これら形質転換体のRFP及びGFP高発現個体をウエスタンブロットにより選抜した。しかし、35Sプロモーターを用いたためなのか、イネ胚乳におけるGFP及びRFPの発現が予想以上に低かった。RBPの局在を解析するうえで、十分なRFP及びGFP発現量が得られなかっため、解析が難航した。GFP導入個体では解析が難しかったため、RFP蛍光を増強させるRFP-BOOSTREを用いて解析を行った。その結果、RFP-RBPA, RFP-RBPJ及びRFP-RBPQは核及びプロラミン蓄積部位であるPB-ER膜に局在が認められた。細胞質にもその局在が認められたが、再現性が得られなかった。再度細胞質に局在するかを検討する予定である。 更に、RBP-A, I, J, K, Qがグルテリン及びプロラミンmRNAの小胞体への輸送に関与することを明らかにするため、同形質転換体種皮を用いてRNA-IP及びRT-PCRを行った。まず、mRNAとRBP等のタンパク質を結合させるために最適なUVクロスリンクの条件検討を行った。その結果、500mJ/cm2のUV照射が最適だった。この条件でイネ30-40粒の果皮をUVクロスリンク処理し、粗抽出液を調製した。RFP-Trapを用いて免疫沈澱させた後、回収された沈殿物からRNAを抽出した。RT-PCRの結果、RBP-A, RBP-I及びRBP-QはプロラミンmRNAと結合していることを示唆するデータが得られたが、各RBPがグルテリンmRNAと結合していることを明らかにできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
研究拠点を九大に移し、Okita教授の研究室で遂行していたRNA-IP, in situ RT-PCR等の実験系の立ち上げを図り、再度、形質転換体を用いた各RBPの細胞内局在解析及びRNA-IPを試みる。 更に、作出された4種のRBP(RBP-A,I,J,K)の変異体を用いた解析を行う予定である。前年度の各RBP変異体の組織学的解析結果より、RBP-A, RBP-I及びRBP-K変異体種子において、プロラミンの蓄積が変化していたことから、プロラミンmRNAの局在がPB-ERだけでなく、Cis-ERにもミスターゲットされていると考えている。その点を明らかにするために、同変異体登熟種子を用いてin situ RT-PCRを行い、グルテリン及びプロラミンmRNAの局在変化の有無を調査する予定である。また、これら変異体の登熟種子における、各RBPの発現量をウエスタンブロットにより解析し、ナンセンス変異であるかを明らかにする。同時に、貯蔵タンパク質グルテリン、プロラミン、グロブリン等の発現量も調査し、各RBP変異における貯蔵タンパク質の蓄積への影響を調査する。各RBP抗体については、Okita教授より分譲済みである。 RBP-A, I, J, K変異体種子において、グロブリン抗体で反応する構造体が認められた。今後、電子顕微鏡解析により、その構造体の詳細を調査し、RBPの更なる機能を明らかにする。
|