研究実績の概要 |
イネ種子貯蔵タンパク質グルテリン及びプロラミンは、小胞体上で合成され、プロラミンは小胞体に蓄積し、グルテリンは貯蔵型液胞内へ輸送、蓄積される。これらの貯蔵タンパク質の異なる細胞小器官への蓄積は、小胞体からの輸送蓄積系の違いだけでなく、各貯蔵タンパク質 mRNAの小胞体領域への局在の違いによって制御されていると考えられているが、その詳細は不明である。 本研究は、プロラミンmRNAの小胞体領域への輸送に関与すると考えられるRNA結合タンパク質(RNA Binding Protein: RBP)-A, I, J, K, Qに焦点を当て、グルテリン及びプロラミンmRNAの小胞体への輸送と同タンパク質の蓄積との関連性を明らかにすることを目的としている。 プロラミン顆粒(PBI)が小型化していた変異体のPBIを詳細に調べた。rbp-i(S176F)変異種子では、小型化したPBI内に野生型で認められる年輪構造(システイン残基に富むプロラミン分子の凝集により生じる)が観察されなかった。RBP-I(S176F)の関与によるプロラミンmRNAの小胞体への輸送は、各プロラミン分子のPBIへの集積に影響していることが考えられる。 また、rbp-q(G318S)変異種子では、野生型PBIが存在せず、プロラミンはでこぼこの球形状の顆粒に存在し、同顆粒は小胞体内に多量に存在していた。興味深いことに、同顆粒が集合した領域内及び同顆粒内にグルテリン抗体で標識される部位が存在した。このことは、小胞体内にグルテリン前駆体も留まっていると考えられる。RBP-Q(G318S)はプロラミンの正常な蓄積のみならず、グルテリンの輸送・蓄積にも関与していると考えられる。 以上の結果より、RBP-I及びRBP-Qが関与するプロラミンmRNAの小胞体への輸送は、プロラミン及びグルテリンの細胞内輸送・蓄積に関与することが示された。
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