研究実績の概要 |
全ての細胞は増えるために分裂を行う。これはがん細胞も同じである。つまり分裂を完全に制御できれば、人類はがんを克服できる可能性がある。しかし分裂の制御機構はまだ不明な点が多く、最終目標である分裂の完全制御のためには、より詳細な細胞分裂機構の解明が必要になっている。 申請者は、細胞分裂に関与する新規タンパク質を同定するため、siRNAを用いてスクリーニングを行いLeucine Zipper Protein 1 (LUZP1)と呼ばれる機能未知のタンパク質に着目した。しかし最近になってLUZP1はprimary cilia形成に関与していること(Bozal-Basterra L, et al., Elife, 2020; Goncalves J, et al., J Cell Biol., 2020)、タイトジャンクションにおけるアクトミオシンの収縮制御に関与していること(Yano T, et al., EMBO J., 2021)が報告され、その機能が急速に明らかになってきている。 申請者はこれまでの研究から、LUZP1が間期にはアクチン上に、細胞分裂期には中心体、動原体、セントラルスピンドル、ミッドボディなど、細胞分裂に重要な複数の構造体に局在することを見出している。また非常に興味深いことにLUZP1を抑制すると収縮環の収縮速度が速くなることも明らかにしている。2020年度、申請者はLUZP1の上述した局在に必要な部位やシグナルをLUZP1の欠損株やシグナル阻害剤を用いて明らかにした。またLUZP1と結合するタンパク質との関係性を生化学的手法により解析した。申請者は現在以上の結果をまとめて論文を執筆している。
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