研究実績の概要 |
本研究では、動物細胞において進化的に保存された細胞小器官である、中心小体の複製開始のコアメカニズムの理解を目指してきた。中心小体複製のイニシエーター分子が相互作用し、新しく作られる中心小体の数を一つに限定する一方で、どのように集合して9回対称構造を持つ構造体(中心小体前駆体)を形成するのか、関係するタンパク質の分子的性質を精査することで手がかりを得ようと試みてきた。前年度は、中心小体複製のイニシエーターである3つのタンパク質、PLK4, STIL, SAS-6のうち特にSTILに着目し、タンパク質のフラグメント解析によりその分子的性質の一部を明らかにした。本年度は、イニシエーター分子の集合体が、中心小体の構造体になる過程において必要と考えられる分子のうち、特に微小管形成に関わるγTuRCの構成因子GCP2, GCP6と、Cep295, Cep135に着目し、細胞内においてターゲットをタンパク質レベルで分解を誘導するauxin-inducible degron (AID)システムを用いて、これらの分子を時期特異的にタンパク質ノックダウンすることにより、構造体構築にどのように関わるのか明らかにしようと試みた。しかしながら、これらの分子に対して内在遺伝子にAID-tagを付加した細胞ラインを樹立することが難しく、解析を進めることはできなかった。また昨年度に引き続き、中心小体複製に関わる主要タンパク質の複合体精製を試みたが、不成功に終わった。中心小体複製開始に関わる分子のそれぞれの生化学的性質や細胞内の挙動を精査する一方で、それら分子の複合体の再構成を試みることで、メカニズムの包括的な理解を目指してきたが、個々の分子の解析において新しい成果を得るにとどまった。
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