研究実績の概要 |
平成30年度の研究は、研究実施計画を一部修正しつつ実施し、以下の成果を得た。 頬ひげのMerkel細胞の分化における上皮-神経相互作用の関与を解析するために、頬ひげ形成前のマウス胎仔の頬の皮膚と三叉神経節を用いた独自の器官共培養技術を開発し、その成果を論文にまとめて出版した(Ishida et al., Development, Growth & Differentiation 60(5), 291-299, 2018)。この技術を用いて頬ひげのMerkel細胞の分化における上皮-神経相互作用の関与を解析したところ、三叉神経節由来の神経線維との相互作用が無くとも、培養によって形成した頬ひげ原基の特定の部位でのMerkel細胞の分化が観察された。このことから、頬ひげにおけるMerkel細胞の分化において、三叉神経からのシグナルは必ずしも必須ではないことが示唆された。一方、正常発生の頬ひげ原基と比較して器官培養した頬ひげ原基では、分化するMerkel細胞の数が減少している傾向が観察された。この現象が、三叉神経との相互作用の欠如によるものか、培養条件の制限によるものかを検証する必要がある。また、出現する位置に関しては正常発生と概ね同等であった。このことは、Merkel細胞が分化する位置は、頬ひげ原基の発生過程において、何らかのメカニズムで自律的に決定していることを示唆していると考えられた。 Merkel細胞の蛍光追跡のための実験手法として計画していたマウス初期胚へのin vivoエレクトロポレーション法を習得した。文献に従い、蛍光タンパク質発現プラスミドベクターをマウス初期胚に注入して電気パルスを当てることにより、高効率で局所的な蛍光タンパク質の強制発現が観察された。この手法を頬の皮膚への遺伝子導入に応用することにより、Merkel細胞のレポーターマウスの作製を試みる予定である。
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