本研究では、マウス嗅覚系における神経活動依存的な神経回路の形成機構を解明すべく、嗅細胞における神経活動の記録および操作の実験を行った。その結果、①個々の嗅細胞に発現する嗅覚受容体という情報は神経活動の自発発火パターンへと変換されること、②それぞれの神経活動パターンは異なる軸索選別分子の発現を誘導すること、③嗅覚受容体の種類という情報は神経活動パターンを介して分子発現を誘導し、それらの分子発現によって回路の精緻化が行われることを明らかにした。この結果は、『神経活動の同期性』を前提としたヘブ則とは異なる『神経活動の時間的なパターン』に基づいた新奇の回路形成機構が存在することを示している。
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