研究課題/領域番号 |
18K14717
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石内 崇士 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (80612100)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胎盤発生 |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝学的スクリーニングにより同定した、胎盤発生制御の候補遺伝子Zfp281の機能解析を行った。研究当初は、胚体組織と胚体外組織の両方における解析を予定していたが、胚体組織における解析結果が他の研究グループにより報告されたため(Huang et al., Elife, 2017)、本研究では胎盤幹細胞(TS細胞)と胎盤発生における機能に注目し研究を行った。免疫染色により、Zfp281はマウス初期胚において胚体組織へと分化するエピブラストと胎盤組織へと分化する胚体外外胚葉の両方で高い発現を示すことがわかった。また、胚体外外胚葉においては、未分化な集団においてZfp281の高発現がみられた。これをふまえ、TS細胞での発現パターンを調べたところ、Zfp281はTS細胞においても未分化な状態の時に高発現し、分化とともにその発現が消失することがわかった。阻害剤を用いた実験から、この発現にはFGFのシグナルが重要であることがわかった。CRISPR-Cas9によりノックアウトマウスを作製したところ、Zfp281ノックアウトマウスは胎生9日で致死であり、胚体・胚体外組織の両方で重篤な発生異常を示した。Zfp281の胎盤発生における機能を明確にするために、4Nおよび2Nキメラを用いたアッセイを行った。これにより、正常発生のためには、Zfp281の胚体外系列における発現が重要であることがわかった。次に、Zfp281ノックアウトTS細胞とともにノックアウトマウス由来の胎盤を用いたRNA-seqを行った。その結果、数百の遺伝子が発現変動を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胚体組織におけるZfp281の解析結果が他の研究グループにより報告されたため(Huang et al., Elife, 2017)、本課題ではやや路線を変更し、Zfp281の胚体外系列における機能解析を集中的に行うことにした。その材料としてはZfp281ノックアウトマウスおよびZfp281ノックアウトTS細胞を用いた。免疫染色により、Zfp281は未分化な状態にある胚体外外胚葉やTS細胞において高発現することを明らかにした。また、野生型ES細胞を用いたキメラマウスの解析から、Zfp281の胚体外系列における発現が重要であることを明確にすることができた。さらに、TS細胞とマウス胎盤を用いたRNA-seqにより、Zfp281ノックアウトにより生じる遺伝子発現変化を明らかにすることができた。この結果、TS細胞とマウス胎盤で共通して発現変動を示す遺伝子を同定することに成功しており、これらはZfp281のターゲット遺伝子であることが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
RNA-seqにより、TS細胞とマウス胎盤で共通して発現変動を示す遺伝子を同定することに成功しており、これらはZfp281のターゲット遺伝子であることが考えられる。そこで、当初の予定通り、TS細胞を用いたクロマチン免疫沈降―シーケンシング(ChIP-seq)を行い、Zfp281がこのターゲット遺伝子群の制御領域(プロモーターやエンハンサー)に結合するかを明らかにする。また、Zfp281が遺伝子活性化あるいは抑制のいずれの機能を有するのかを明らかにするために、Zfp281の結合領域とヒストン修飾とのオーバーラップを検討する。すでにTS細胞を用いたヒストン修飾データ(H3K4me1、H3K4me3、H3K27me3、H3K9me3など)は公開されているため、それを用いた比較解析を行う。
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