前年度までに、発生初期ニワトリ胚(HH15-18)の側板中胚葉頸部、前肢部、胸腹部、後肢部それぞれからRNAを抽出し、RNA-seq解析を行っていた。そこから得られたシーケンスデータを基に、本年度は本格的なデータ解析を行った。頸部、前肢部、胸腹部、後肢部のトランスクリプトームを全ての組み合わせで1対1で比較し、発現量に2倍以上の差が見られる遺伝子を選出した。その遺伝子群について、発現パターンでクラスタリングを行い、それぞれの領域で特異的に発現する遺伝子群に分類した。頸部特異的に発現する遺伝子が最も多く、約900遺伝子を選出した。得られた遺伝子群について、エンリッチメント解析を行ったところ、頸部特異的な遺伝子群については、"cardiovascular system development"などの心臓発生に関わるGO TERMが有意に多かったため、頸部側板中胚葉のトランスクリプトームは発生期心臓と類似していることが示唆された。ニワトリ胚発生期心臓のRNA-seqはすでに報告されているため、本研究で得られたトランスクリプトームと心臓のものとを比較したところ、側板中胚葉と心臓のトランスクリプトームには大きく差が見られたが、側板中胚葉の中では、頸部のトランスクリプトームが最も心臓に近いことがわかった。頸部特異的な遺伝子群の中から、転写制御に関わる遺伝子に注目し、現在、in situ hybridizationで発現解析を行っているところである。
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