受精は有性生殖において極めて重要な生命現象であり、植物においては種子植物の受粉に見出すことができる。雄しべで形成された花粉が雌しべの柱頭に付着すると、花粉から花粉管が伸長し卵細胞を有する胚のうへと導かれる(花粉管ガイダンス)。花粉管の誘導には胚のう中に存在する助細胞が分泌するLUREペプチドが関わっており、花粉管先端に存在するLURE受容体がLUREを認識することで卵細胞に向かって伸長することができる。本申請課題では、シロイヌナズナのLUREとその受容体であるMIK、MDIS、PRKを対象とし、個々のタンパク質およびLURE-LURE受容体複合体のX線結晶構造解析を進める。さらに、それらの間の相互作用解析を詳細に行うことで、花粉管ガイダンスにおける花粉管誘因因子の認識機構と結合特異性に関する構造基盤を構築することを目的とする。 これまでの研究において、MIK2/MDIS1/LURE複合体およびMIK2/LURE複合体の結晶が得られていた。本年度はこれらの結晶の品質向上のために結晶化条件の検討を行ったが、構造解析に十分な品質の結晶は得られなかった。LUREおよびMDISが精製過程で凝集する傾向にあったため、発現領域、発現ホスト(S2細胞、大腸菌)、精製方法の検討を行った。検討の結果、タグを付加したままMIK/MDIS/LURE複合体を形成させ、その後タグを切断することで精製試料を得ることに成功した。現在これら試料を用いて結晶化を進めている。
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