研究課題/領域番号 |
18K14729
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
武内 秀憲 名古屋大学, 高等研究院(WPI), 特任助教 (10710254)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 受容体 / シグナル伝達 / 花粉管 / 誘引物質 / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
被子植物シロイヌナズナの生殖過程において、胚珠の助細胞から分泌される花粉管誘引ペプチドAtLURE1は花粉管先端の細胞膜に局在するPRK6によって受容される。受容体様キナーゼであるPRK6は、同様に花粉管で発現する複数のPRKファミリー受容体と協調してはたらくことで花粉管の伸長・誘引を制御すると考えられている。本研究ではPRK6と複数のPRK受容体が(1)どのような因子を介して細胞内にシグナルを伝達しているのか、(2)PRK受容体がどのように花粉管誘引(AtLURE1の感知)と花粉管伸長の情報を統合しているのかを解析した。 (1)PRK受容体と相互作用し、シグナル伝達に関与すると考えられているROPシグナル伝達経路の因子に対し、遺伝学的な解析を進めた。花粉管で発現する複数のROPタンパク質、活性化因子であるROPGEFタンパク質、ROPのエフェクタータンパク質に対し、T-DNA挿入変異体とCRISPR-Cas9系による変異体を組み合わせて多重変異体の作出を進めた。また、PRKとの相互作用が期待される因子やその活性化因子に対しても、変異体や蛍光標識株の作出を進めた。 (2)PRK1-8のそれぞれに対して蛍光標識株を作出し、これまでに得ていたPRK3、PRK6に加えてPRK1、PRK2、PRK4、PRK5、PRK7、PRK8の発現・局在を解析した。その結果、発現が見られなかったPRK7を除く全てが花粉管で発現しており、それぞれが少しずつ異なる局在を示すことが明らかとなった。また、タバコの葉の細胞を用いたBiFC(二分子蛍光相補性)解析により、PRK6はその他のPRK受容体のそれぞれと相互作用することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全てのPRK受容体の局在を調べるため適切な発現量の蛍光標識株の選抜・観察を行い、それぞれが少しずつ異なる領域に局在するという興味深い知見を得た。PRK6と他のPRK受容体が相互作用し得るという相互作用解析の結果と合わせて、PRK受容体が花粉管の伸長・誘引を制御する分子装置としてはたらく仕組みの解明は着実に進んでいる。PRK受容体のシグナル伝達を担う因子の解析のための多重変異体や蛍光標識株の作成も着実に進んでいる。表現型の解析や局在の観察はまだ実施できていないものの、次年度すぐに解析を行う準備はできたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
PRK6がどのドメインを介して他のPRK受容体と相互作用するのか、シグナル伝達に関わる因子との相互作用様式などを詳細に調べていくことで、PRK受容体シグナル伝達の仕組みを調べていく。作成したシグナル伝達因子の変異体の表現型解析や、変異体背景におけるPRK受容体およびシグナル伝達因子の局在解析も行う。タバコBY-2細胞などを用いた異種発現による、AtLURE1-PRK-ROPシグナル伝達の再構成と分子ダイナミクスのイメージング解析も試みる。以上の解析を通じて、PRK受容体が協調してはたらき、花粉管の伸長と誘引のシグナルを統合する分子機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
受入研究室の運用ルールの修正により、物品(消耗品)にかかる費用が当初見込んでいたものよりも少なくなった。一方で、研究の進展により、当初予定していなかった研究補助員の雇用が必要になると見込んだ。そのため、当該研究に必要な比較的高額な物品および研究補助員の雇用が研究の進展に必要であると見込み、次年度に予算の一部を繰り越した。
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