研究課題/領域番号 |
18K14731
|
研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
中村 守貴 基礎生物学研究所, 植物環境応答研究部門, 特任研究員 (90808560)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 重力屈性 / 重力シグナリング / LAZY1ファミリー / タンパク質分解 / 細胞内局在 |
研究実績の概要 |
重力屈性反応における重力シグナリングは、アミロプラスト沈降による重力感受と方向性を持ったオーキシン輸送制御とをつなぐ、重力感受細胞内の情報伝達プロセスである。LAZY1ファミリーは重力シグナリングに関わる重要な鍵因子であることが示されている。しかしながら、LAZY1ファミリーが重力感受細胞内においてどのような時空間的細胞内挙動を示し、その機能を発揮しているのかは未だ不明である。本研究では、LAZY1ファミリーのうちLZY3に着目し、LZY3が機能を発揮する上で重要となる自身の分解制御機構の解明を目指している。さらには、LZY3の分子挙動とアミロプラスト動態を時空間的に関連付けることで、LAZY1ファミリーを中心とした重力シグナリングの分子機構の解明を目指している。 1. LZY3の量的制御に関わるタンパク質分解機構 自身のプロモーターで発現させたLZY3-mCherryがMG-132処理により安定化することが確認できた。LZY3-mCherryのユビキチン化を直接的に示すために生化学的解析の準備を進めている。 2. LZY3の量的制御とアミロプラスト沈降との関連性 予備実験として、自身のプロモーターでLZY3-mCherryを発現させた植物体に遠心機を用いて過重力を加えた後に、LZY3-mCherry蛍光を観察した。しかし、蛍光強度の変化が確認できなかったため、この原因について現在検証を進めている。 3. LZY3の細胞内局在制御とアミロプラスト沈降との関連性 これまでの先行研究では、自身のプロモーターで発現させたLZY3-mCherryの存在量は低く、生きたコルメラ細胞内での検出は困難であるとされていた。しかしながら、高感度のライブイメージング技術を用いることでLZY3-mCherry蛍光の検出が可能となり、現在、アミロプラスト動態との関連性について解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. LZY3の量的制御に関わるタンパク質分解機構 MG-132処理後、自身のプロモーターで発現させたLZY3-mCherryの蛍光がコルメラ細胞内で強く検出された。この結果は、LZY3がユビキチン化によるタンパク質分解制御を受けている可能性を強く示唆しており、LZY3ユビキチン化の直接的な検証にむけた生化学的解析を進めることが現実的であることを示している。 2. LZY3の量的制御とアミロプラスト沈降との関連性 予備実験として、通常の遠心機で過重力を加えた後に自身のプロモーターで発現させたLZY3-mCherryの蛍光観察を行った。しかしながら、LZY3-mCherryの蛍光強度の変化が確認できなかった。この結果は、過重力条件下のコルメラ細胞内の様子をリアルタイムで観察することの必要性を示すものとなった。 3. LZY3の細胞内局在制御とアミロプラスト沈降との関連性 自身のプロモーターで発現させたLZY3-mCherry蛍光の検出は困難であるとされていたため、当初、過剰発現させたLZY3-mCherryの細胞内局在解析を行う計画であった。しかしながら、横倒し垂直ステージ共焦点顕微鏡を用いた高感度のライブイメージング技術を用いることで、自身のプロモーターで発現させたLZY3-mCherryの検出が生きたコルメラ細胞内で可能となった。この結果は、本来のLZY3-mCherryの細胞内局在を解析していく上で大きな進展といえる。今後さらに解析を進めていくことで、LZY3-mCherryの細胞内分子挙動とアミロプラスト動態との関連性が明らかになると大いに期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
1. LZY3の量的制御に関わるタンパク質分解機構 自身のプロモーターで発現させたLZY3-mCherryの蛍光がMG-132処理後に強く検出されたことから、LZY3はユビキチン化によるタンパク質分解制御を受けている可能性が強く示唆された。今後は、MG-132処理後の植物サンプルからタンパク質を抽出し、シロイヌナズナにおいても応用されているユビキチン化タンパク質検出法によりLZY3のユビキチン化を直接的に検証する。また、LZY3を特異的基質とするE3ユビキチンリガーゼの同定に着手する。 2. LZY3の量的制御とアミロプラスト沈降との関連性 通常の遠心機で過重力を加えた予備実験では、自身のプロモーターで発現させたLZY3-mCherryの蛍光強度の変化が確認できなかった。今後、この原因を詳細に検証していくとともに、新たな観察手法を取り入れる。 3. LZY3の細胞内局在制御とアミロプラスト沈降との関連性 横倒し垂直ステージ共焦点顕微鏡を用いた高感度のライブイメージング技術により、自身のプロモーターで発現させたLZY3-mCherryがコルメラ細胞内で検出可能になった。今後は、横倒し垂直ステージ共焦点顕微鏡を用いることで、LZY3-mCherryとアミロプラストの同時観察・細胞内動態イメージング解析を行い、重力方向変化に伴うアミロプラスト沈降とLZY3-mCherryの細胞内局在変化を詳細に解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費のうち、実験に使用した消耗品の支出が計上した額よりもわずかながら (13,281円) 下回ったために次年度使用額が生じた。次年度においては、消耗品の経費等に使用する予定である。
|