生物時計は外部環境の24時間周期に同調し、明暗周期や季節変化を予測することで、生理応答を適切なタイミングで制御するための内生の計時機構である。動物の生物時計は、組織ごとに異なる遺伝子群の発現を制御することで、組織ごとに異なる生理応答を制御できることが知られている。近年、植物の生物時計にも組織特異性が存在することが明らかになってきた。しかし、全身で共通している概日時計の構成因子が、それぞれの組織でどのような刺激を受容し、どのような遺伝子を制御することで異なる生理応答を制御するかについては未明である。 本研究では、各組織の生物時計がもつ性質・役割を解析し、生物時計の組織特異性がもつ生物学的な意義を明らかにするため、組織特異的な時計遺伝子の標的遺伝子について解析を進めた。時計遺伝子の1つであるLUX/PCL1 (当初の予定ではCCA1を用いる予定であったが、発現量の関係からLUX/PCL1に変更した) と蛍光タンパク質GFPの融合タンパク質を発現する株を用いて、クロマチン免疫沈降 (ChIP)を行い、幹細胞 (維管束幹細胞を含む) におけるLUX/PCL1の標的遺伝子をChIP-seq解析によって網羅的に同定し、LUX/PCL1が細胞周期関連因子やエピジェネティック制御因子を直接的に制御することを明らかにした。以上より、概日時計が幹細胞において細胞周期やエピジェネティック制御因子を統合的に制御することで、細胞運命を決定する可能性を示した。
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