研究課題/領域番号 |
18K14735
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗田 悠子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (00796518)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 転流 / 季節 / 落葉木本植物 / ポプラ / リン |
研究実績の概要 |
落葉木本植物では落葉前に葉から様々な栄養素を回収し、冬期の貯蔵を経て春に再転流することで、貴重な栄養素を効率的に利用していることが知られている。本研究ではモデル樹木であるポプラを用いて、リンの冬季貯蔵分子であるイノシトール6リン酸(IP6)の分解酵素の同定を目的とし、春のIP6の分解とリンの再転流の重要性の評価を目指している。当該年度は、前年度に問題が見つかった標的タンパク質の精製とIP6分解活性の実験系の検討を行った。標的タンパク質精製時の溶出バッファーによる分解活性測定阻害を除くために、精製カラム上での分解活性測定に切り替え、既知のIP6分解酵素であるシロイヌナズナPAP15タンパク質のIP6分解活性を検出できることを確認した。同実験系を用いてPAPファミリーのうち枝における春期の発現の高い候補タンパク質のIP6分解活性を測定したが有意な分解活性は示されなかった。現在は精製タグの検討や他の候補タンパク質における分解活性の測定と、Populus tremulaとP. tremuloidesの交雑種のクローンT89系統の時系列RNA-Seqの解析を進めている。 またP.albaの実験室内系を用いた葉と幹の主要なリン輸送体(PHT1-5, PHOs)の季節変動の解析結果と、放射性同位体を用いた葉からの季節的な転流追跡実験の結果を合わせて論文を執筆し、Plant, Cell & Environmentに投稿・採用された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IP6分解酵素の分解活性測定系の確立ができたものの、一番の候補タンパク質において有意な分解活性が検出されなかったため、次点以降も含めた検討が必要である。また申請者自身の所属の変更に伴う実験の中断期間があり計画に遅れが生じたため延長申請を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度においてIP6分解活性測定系の改良が完成したので、これまでに季節的なリンの転流が解析されているP.albaと、Populus tremulaとP. tremuloidesの交雑種のクローンT89系統のそれぞれについて、まだ分解活性を測定していない候補タンパク質の活性測定を行い、IP6分解活性を持つ遺伝子を同定する。現在進めているT89系統のRNA-Seq解析を完了させ、候補遺伝子やリン輸送・代謝関連遺伝子の開芽時における発現変動パターンを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの流行による学会や出張のオンライン開催や中止に加え、当該年度中に申請者の所属移動があり実験に遅延が生じたため。
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