細胞の形づくりにおいて微小管の配向は間期・分裂期それぞれで重要な役割を果たす。間期では表層微小管の配向を制御することで細胞壁の蓄積パターンを制御し、細胞分化の原動力となる。また分裂期では細胞板の形成箇所を規定し、細胞板成分の輸送に働くことで細胞質分裂を駆動する。これまでの研究で、間期・分裂期の両方において微小管の配向・動態を制御する微小管付随タンパク質CORDファミリーをシロイヌナズナにて同定した。CORDファミリーは陸上植物に特有なタンパク質であり、本研究ではCORDファミリーの解析を通じて陸上植物に特有な分化・分裂機構を理解することを目的とした。 本研究ではCORD4が分裂期において微小管の配向を制御していることを突き止めた。CORD4が分裂期微小管構造であるフラグモプラスト微小管の長さを制御している因子であることを報告した。フラグモプラストには短い微小管が分裂面に沿い並行に並び、細胞板成分輸送のレールとして機能する。CORD4はフラグモプラスト微小管の端に微小管切断タンパク質カタニンを繋留することで、フラグモプラスト微小管の端をトリミングして適切な長さに保つ機能を有していた。フラグモプラスト微小管は細胞分裂面を同心円状に拡大しながら細胞板を形成する。しかし、フラグモプラスト微小管が適切な長さに保たれたいと、フラグモプラスト微小管拡大時に余分な微小管の重合が必要となり拡大速度が低下してしまう。フラグモプラスト拡大速度の低下は細胞板形成速度の低下を招き、細胞質分裂の遅延を招く。本研究成果からCORD4がフラグモプラスト微小管の長さを短く保つことにより、フラグモプラスト拡大を効率化させることで細胞質分裂速度を適切に保っていることが示唆された。本研究成果は陸上植物が独自に獲得した分裂様式を分子的に明らかにしたもので、植物の陸上化を理解する上で重要な知見になると考えている。
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