研究課題
真核細胞内に存在するタンパク質や脂質、多糖類は、「膜交通」と呼ばれるシステムにより、それらが機能する単膜系オルガネラへと正確に輸送される。進化の過程において、オルガネラの新規獲得に伴い、新規膜交通経路の開拓があったと考えられるが、その進化的イベントに膜交通とその実行因子群がどのように関与したのかについてはほとんど分かっていない。本研究課題では、系統特異的オルガネラ獲得の分子機構解明の基盤となる知見の構築を目指し、苔類特異的なオルガネラである油体を新規獲得オルガネラのモデルとして、ゼニゴケの油体発生と膜交通の関与、植物の系統特異的オルガネラ獲得の共通モジュールの解明を目指した。ゼニゴケの油体が分泌経路(細胞外方向の輸送)を細胞内方向へと切り替えることにより形成されること、また、その輸送方向の切替えおよび油体形成に重要な役割を果たす転写因子群を同定し、学術論文に発表した。油体の生長に伴い、油体細胞も肥大化することから、細胞膜・細胞外への分泌経路と油体方向の分泌経路の方向転換は、周期的に繰り返すことが想定され、このオルガネラへの輸送切替えの周期を「油体周期」として提唱した。さらに、分泌経路の方向転換時には、細胞骨格の大規模な再編成が起こり、この細胞骨格の再編成がオルガネラ形態形成に関与する分子の輸送やオルガネラ・ポジショニングに重要な役割を果たしていることが示唆されるとともに、その細胞骨格再編成が油体形成マスター転写因子制御下に存在する未知因子により制御されていることを示唆する結果が得られつつある。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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https://www.nibb.ac.jp/pressroom/news/2020/12/01.html