研究実績の概要 |
近年、動物組織を標的とした画期的な組織透明化手法が開発されてきた。植物細胞は動物細胞と異なり細胞壁を持ち、葉緑体や液胞に色素を蓄積させている。細胞壁や色素が光の散乱や吸収を引き起こし組織の透明度を減少させている。そのため動物組織に対する透明化手法を植物組織にそのまま適用した場合、長時間処理を行わなければ透明化を達成できなかった。しかし、本研究では蛍光タンパク質の蛍光を維持しつつ、植物組織を迅速かつ高度に透明化する新技術を開発した。透明化技術を固定・脱色・再活性化・マウントの4つのステップに分け、蛍光タンパク質を発現するシロイヌナズナの芽生えを用いて条件検討を行った。昨年度のうちにベースとなる手法の開発は完了していたので、各ステップにおける細かい条件の最適化を行った。脱色のステップでは、昨年度発見した界面活性剤の濃度や処理時間、他の界面活性剤との組み合わせの検討を行い、最適な条件を決定した。再活性化のステップでは前述の脱色のステップと同時処理が可能であることを見出し、全体の処理時間を短縮することに成功した。更新した手法でも、シロイヌナズナ、イネ、ゼニゴケにおける透明化効率に変化はなく、蛍光タンパク質の蛍光も維持できていることを確認した。また本手法が、GFP, YFP, mOrange, tdTomato, tagRFPの蛍光タンパク質に適用可能であることを確認し、免疫蛍光抗体法と本手法を同時に行うことが可能であることも示した。
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