研究実績の概要 |
【温度感受性実験】サンゴ初期胚発生過程の温度感受性を調べるため、ウスエダミドリイシサンゴ(Acropora tenuis)の胚を受精後16℃、21℃、26℃、31℃でインキュベートした。親個体の組み合わせを3種類用意して実験を行った結果、受精後3時間16℃もしくは21℃でインキュベートしただけで、胚発生に異常をきたすことが明らかとなった。一方、26℃および31℃でインキュベートした場合は特に問題なく発生した。これらの結果から、顕微注入実験も低温で行うべきではないことが判明した。 【遺伝子機能解析】Acropora tenuisの受精卵に、PKS, Galaxin, Galaxin2, Galaxin-like1, Galaxin-like2に対するアンチセンスモルフォリノオリゴを顕微注入し、初期石灰化過程におけるこれらの遺伝子の機能解析を行った。モルフォリノオリゴ注入後約2週間のプラヌラ幼生を変態させ、骨格形成をカルセインを用いて変態1日目および2日目で蛍光観察したが、コントロール胚と機能阻害胚の間で顕著な差は見られなかった。変態後15日目にポリプの軟組織を洗い流し、骨格標本として観察したが、そこでも大きな差は見られなかった。 【トランスクリプトーム解析】Acropora sp.1の胚(0, 16, 32, 56, 80hpf)、プラヌラ幼生(5dpf)、初期ポリプ(7hpm)、およびAcropora tenuisのプラヌラ幼生、初期ポリプ(1, 6hpm, 1, 3, 7dpm)のRNA-seq解析を行った。 【PKS遺伝子クローニング】Acropora tenuisのPKS遺伝子(約10kb)を初期ポリプcDNAからクローニングした。ゲノムから予測された遺伝子モデルの通り、脊椎動物PKS遺伝子と相同性のあるドメインが数多く見つかった。
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