本年度は本研究をほとんど遂行できなかったため、以下に今後の研究の展開に関する計画を記す。 【サンゴ胚への顕微注入実験による遺伝子機能解析】これまで行った水温・pHに対するサンゴ幼生・ポリプの耐性実験結果を論文発表する。 【サンゴPKSの機能解析】石灰化においてポリケチド合成酵素(PKS)が担う機能の進化的保存性を調べるため、サンゴPKS遺伝子の機能を脊椎動物モデル(メダカ)で検討する。メダカのPKS変異体は耳石形成不全の表現型を示すので、サンゴPKS遺伝子の過剰発現によるレスキュー実験を行い、刺胞動物から脊椎動物まで保存された石灰化メカニズムが存在するのかを明らかにする。 【サンゴ変態期におけるRNA-seq解析】ウスエダミドリイシサンゴ(Acropora tenuis)のプラヌラ幼生および変態初期のポリプを用いたRNA-seqデータから、初期ポリプの成長過程において顕著に発現が増減する遺伝子を割り出し、既知の石灰化関連遺伝子のプロファイルと比較することで石灰化関連遺伝子を網羅的に同定する。また、Acropora sp.1のRNA-seqデータからトランスクリプトームアセンブリを行って遺伝子モデルを構築し、A. tenuis同様に石灰化に関わる遺伝子の発現量解析を実施する。産卵時期が異なるAcropora種間での保存性を調べることで、海水温などの環境に対して頑健な石灰化メカニズムの根幹を解明する。
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