本研究は管構造において、周方向へ等間隔に現れるアクチンリングのパターン形成の分子メカニズムを超解像イメージングおよびショウジョウバエの遺伝学により、明らかにすることを目的とした。前年度までに等間隔アクチンリングは、数十ナノメートル径のアクチン微小集合体(ナノクラスター)を前駆体としていることが明らかとなっていた。また、遺伝学的スクリーニングにより、ナノクラスターの構成に必須のアクチン結合分子も複数同定されていた。 最終年度は、これらのアクチン結合分子の発現を抑制した際に、ナノクラスターの挙動へ与える影響を定量的に解析した。PIV解析をした後にフーリエ展開を行うことで、個々のナノクラスターの異方性を明らかにするとともに、微小運動に周期性が無いかを検証した。その結果、各ナノクラスターは周方向へ優位に微小運動をする一方で、周期性は見出されなかった。これは、個々のクラスターが管状組織の軸方向を感知して、それぞれが自律的に運動していることを示唆している。アクチン重合開始因子の一つであるDAAMを欠損させると、ナノクラスターは異方性を失ったため、軸情報の感知にはDAAMが必要であることが明らかとなった。また、各種のアクチン結合分子の発現を抑制してクラスターサイズが小さくなったところ、やはり異方性を失った。以上により、このナノクラスターは特定の分子が集積する集合体として一定のサイズまで成熟することで、等間隔アクチンリングパターンを形成する機能的なユニットとなることが明らかとなった。 この一連の過程は、共同研究者の理研BDRの柴田達夫博士、多羅間充輔博士の開発した粗視化分子動力学モデルに基づいたシミュレーションにより再現され、アクチン・ミオシンII・アクチン結合分子がナノクラスターおよびストライプを自己組織化することが示された。 以上の成果を各種学会で発表し、論文を執筆中である。
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