研究課題/領域番号 |
18K14756
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
夏堀 晃世 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (20732837)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アデノシン3リン酸 / 睡眠覚醒 / ファイバフォトメトリー / in vivo |
研究実績の概要 |
動物の睡眠―覚醒は、脳の睡眠中枢と覚醒中枢の神経活動により引き起こされる。また、この神経活動を規定する膜電位興奮性は、細胞のエネルギー通貨であるATP(アデノシン3リン酸)の細胞内濃度の影響を受けることが示唆されている。このことから、睡眠あるいは覚醒中枢神経の細胞内ATP濃度の生理的変動が当該神経活動に影響を与え、動物の睡眠覚醒のトリガーとして機能している可能性が考えられる。本研究はこの仮説を検証するため、動物の覚醒を制御するオレキシン神経に細胞内ATP濃度変化を感知する蛍光プローブを発現させた遺伝子改変マウスを用い、光ファイバ経由で睡眠―覚醒に伴うオレキシン神経の細胞内ATP変動と神経活動との関係性を解明することを目的とした。 本年度は、Orexin-Creマウスの外側視床下部に、ROSA-CAG-flex-GOATeamとSyn.Flex.Nes-jRGECO1a.WPRE.SV40を搭載したAAVを同時に感染させ、オレキシン神経特異的にATP蛍光プローブ(GOATeam)とカルシウム蛍光プローブ(RGECO)を発現するマウスを作成した。オレキシン神経の細胞内ATP動態とカルシウム活動をインビボ同時計測するため、光ファイバ計測システムを改変し、2種類のプローブ蛍光を同時検出するためのフィルタ設定を行った。しかし当初の予想に反し、RGECO励起光の波長の一部がGOATeamの蛍光フィルタを通過し、計測開始直後に高感度光センサー(GaAsP)が過大光によりダウンするトラブルが生じた。蛍光フィルタ波長域を計測可能下限まで狭めても問題が解決しなかったため、計測系にパルス制御装置を追加し、2種類の励起光照射と3種類の蛍光取得を秒単位で交互に行うこととした。次年度はこの計測システムを用い、マウスの睡眠―覚醒に伴うオレキシン神経活動と細胞内ATP動態の関係性を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ファイバ計測システムのフィルタ設定変更が適切に行えず、新たにパルス制御装置を作成・システムに追加する必要が生じた。また、このシステム改変中、何らかの理由で蛍光光路の物理的な光軸ずれが発生し、計測機器の修繕に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
視床下部オレキシン神経の細胞内ATP動態とカルシウム活動の同時計測を行い、睡眠―覚醒に伴うオレキシン神経細胞内ATP変動を明らかにするとともに、神経活動との関係性を明らかにする。さらに、オレキシン神経活動を変化させる入力系(外側視床下部への神経性入力、血中グルコース変化)がオレキシン細胞内ATP動態に与える影響の有無を明らかにすることで、様々な原因によるオレキシン神経活動変化に、細胞内ATP変動がどのように関与しているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ファイバフォトメトリー機器のトラブルシューティングに時間を要し、実験そのものを次年度に行うこととなった。今後、マウスの睡眠覚醒に伴うオレキシン神経細胞内ATP計測・カルシウム計測に必要な消耗品を主に購入予定である。
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