研究課題
これまでに孤立環境にある個体における遺伝子発現の変化をRNAシーケンスを行い、孤立環境に対して10匹飼育のグループ環境をコントロールとして社会環境要因に対する発現変動解析を行ってきた。研究が立ち遅れてきた原因として、2015年に発表した孤立環境における寿命短縮の結果に対し、現在保有するコロニーのロットは同じであるにもかかわらず、その寿命短縮表現型がよりマイルドになる傾向が観察されてきた。そこで現在のコロニーにて安定的な結果を得るために原因探索と条件検討を行い、その結果、現在のコロニーは2015年に比較してコロニーサイズが1000匹を超えるレベルに拡大しており、餌条件の改善によりコロニーにおける平均寿命も延長する傾向が観察された。そのため、個体月齢が10ヶ月を超える高齢の労働アリを使用することにより、孤立環境における寿命短縮についても複数コロニーにおいて安定的に観察されることを明らかにした。また、次世代シーケンス解析については、今回使用しているサンプルは一個体レベルでの行動データと遺伝子発現データを有するという特性を活かしきれていなかったことから、新たにWGCNA解析を導入し、変数として一個体ずつの壁際滞在時間や移動距離、巣内滞在時間といった行動パラーメータに対する相関解析を行い、さらに候補遺伝子の絞り込みを行った。GO解析によりステロイドホルモン代謝関連因子や酸化ストレス応答、神経伝達物質やトランスポーターの発現変動を見出した。今後は定量PCRによる再現性確認を継続し、各パスウェイの孤立環境にある労働アリの短寿命への関与を明確にし、論文投稿を進める。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cell reports
巻: 32 ページ: 107938
10.1016/j.celrep.2020.107938.