研究課題/領域番号 |
18K14766
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
桂 有加子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (00624727)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ゲノム解析 / 性染色体 / ツチガエル / 無尾両生類 / AI / トランスポゾン / 精巣 / 適応進化 |
研究実績の概要 |
性染色体のターンオーバーの遺伝モデルを提示するために、同一種内にXYとZW染色体をもつツチガエルに着目し、研究を展開している。ツチガエル のゲノムは解読されていない。ツチガエル は生物としての独自な特徴を持つのか、また既存の仮説(複数集団の交雑の結果、多様な性染色体を持つ集団が誕生したなど)の正当性は核遺伝子を用いて証明される必要がある。 本年度は、ツチガエルの新規ゲノムシーケンス、およびゲノムのアッセンブルを行なった。そのデータを用いて、教師なし型AIを用いたBLSOM解析を行い、ゲノムの塩基組成はCGが特に多いことがわかった。また、6種の無尾両生類ゲノムとツチガエル ゲノムを比較した。その結果、ゲノムサイズの大きさとCG頻度に相関があることがわかった。ツチガエル と近縁種であるウシガエルゲノムとの比較により、W染色体に特徴的なリピートを同定し、その中にアカガエル科に特異的なトランスポゾンが含まれることがわかった。以上の結果を基に論文を作成し、論文投稿の準備を行っている(現在英文校閲中)。また、ツチガエル のミトコンドリアゲノムも決定した。現在、ゲノムのアノテーションのために必要となるRNA採取、シーケンスの準備を行っている。 そのほかに、哺乳類の精巣発現遺伝子や公開されているゲノムを用いてデータ解析を行い、適応進化にある遺伝子や遺伝子ファミリーの分子進化についても研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性染色体のターンオーバーのモデルとしてツチガエル に注目して研究を行なっている。申請書ではゲノム決定を行うことを想定していなかったが、先進ゲノムの研究グループの支援によりゲノムシーケンスを行うことができた。その結果、公開されているゲノムデータに加えて、我々が決定したゲノムを解析に用いることができるようになった。ツチガエル のゲノムは大きく、従来の方法ではゲノム解析を行うことが難しかったが、それを克服するためにAIを用いたゲノム解析を導入し、上記の研究結果を得ることができた。そのため、概ね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ツチガエル のゲノムサイズが大きくなった原因について調べる。これまでの研究成果から、反復配列がゲノムの半分以上に及ぶことがわかっている。ゲノムが大きくなった原因としてトランスポゾンのバーストが考えらる。ツチガエル ゲノムのアノテーションを行うことで、遺伝子重複の程度、特定の遺伝子ファミリーの進化などを調べる。また、CGが高いと突然変異率が上がることが予測される。以上の結果に基づき、ツチガエル のゲノムサイズが大きいこと、CG頻度が高いことが性染色体のターンオーバーに影響を与えうるかどうか議論する。また、ゲノムの機能的制約の程度が生物種によって違いがあるかどうかについても調べる。以上のアプローチを基に、性染色体のターンオーバーの一端を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の繰越請求を行ったが、実施予定であった実験を行うのが遅れたので、本年度にRNA解析を実施する。そのため、前年度の予算を翌年に利用する予定である。
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