研究実績の概要 |
本研究計画では変態システムの進化機構を明らかにするため、変態抑制因子Kr-h1と蛹化決定因子Br-Cの作用機序に注目した解析を遂行するものである。最終年度である本年度は, 本研究課題の中枢テーマであるKr-h1のコファクターの探索を行う予定であったが, 新型コロナウィルス蔓延の影響により, 在宅勤務等を余儀なくされ実施可能な研究計画が縮小された。そのため昨年度までに行ったRNA-seq等で得られたドライデータおよび既存の公開データを用いたin sillco解析を中心に, チャバネゴキブリとカイコにおけるBr-Cの標的遺伝子の探索を行った。Br-Cの標的遺伝子を探索するため, 共発現ネットワーク解析によってBr-Cと発現パターンが類似する遺伝子の探索を行った。その過程では, 従来よりも大規模な遺伝子発現データを解析可能なネットワーク構築プログラムを新規に開発した。これにより, まずチャバネゴキブリにおいてBr-Cの標的遺伝子の候補遺伝子を多数見出すことができた。またこのプログラムは汎用性が高いため, カイコにおいても既存の公開データを用いて解析を行った。そして,得られた候補遺伝子について両者で比較することにより, 不完全変態と完全変態昆虫にけるBr-Cの機能比較を試みた。また, チャバネゴキブリにおいては昨年度までに構築したRNAiによる機能解析系を用いて機能検証を行った。また, カイコにおいてはCRISPRによるノックアウトカイコを作出し, 候補遺伝子の機能検証を行った。しかし, カイコにおいては胚生致死が生じるものが多く, 候補遺伝子の多くが多面的な機能を持つことが予想され, 機能検証が難航した。
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