本研究で当初想定していた室内での対面実験に関しては、新型コロナウイルスの影響により前年度に実験ができず当年度も実験中断の可能性があったため、実施を見送り、野外観察とコンピュータシミュレーションを用いた方法に切り替えた。室内実験系に関しては改良作業のみ実施し、バーチャルリアリティー技術だけでなく超音波による微小物体の運動制御を導入し、より効果的な相互作用を成り立たせる実験系の設計を行った。
トンボ(アキアカネ)に関しては、前年度までに収集した野外での映像データの解析を行い、3次元座標を収集した。この他、新規取得データとして、訪花性ハチの雌追尾運動、捕食性カニの餌追跡運動に着目し、トンボ同様に映像解析によってそれぞれの追跡運動における3次元座標を収集した。分析用のコンピュータシミュレーション環境を構築し、実際の追跡経路の途中から他の追跡パターンを適用し、それによってどのような経路が生成されるか確認できるようにした。今後、各種生物の追跡パターンを比較し、それぞれの追跡パターンの特性、有効となる状況について考察を行なっていく。 コウモリ(ニホンキクガシラコウモリ)の研究に関しては、超音波の照準精度についてコンピュータシミュレーションを行い、前年度に確認された予測的な超音波照射行動が照準精度に大きく寄与していることを明らかにした。さらに、本種は、この予測的な照射に対して、超音波発射レートおよび超音波照射角度範囲を調和させることで、照準精度を更に向上させていることが判明した。以上の結果と前年度までの結果をまとめ、論文を執筆した。
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