研究課題
Leucochloridium属吸虫はその幼虫(broodsac)が特徴的な色彩とイモムシに類似した動きをもって陸貝の一種オカモノアラガイの眼柄に現れることで知られている。本研究では、多様な吸虫類のスポロシストの形態の中でも特徴的な本属吸虫の属内における多様性を明らかにした。本年度は昨年度あわせて、Leucochloridium perturbatumおよびLeucochloridium paradoxumのbroodsacが入手可能であった。前者は褐色、後者は緑色のbroodsacのディスプレイが知られている。組織から褐色あるいは緑色の色素の抽出を試みたところ、褐色色素は水溶性であり、ゲルろ過クロマトグラフィーによりカロテノイドに類似したピークを示した。このフラクションをSDS-PAGEで展開すると、4種以上のタンパク質が検出された。一方緑色の色素は水あるいは各種有機溶媒に不溶であったが、proteinaseK処理をすることによりアセトンを用いた薄層クロマトグラフィーでの展開が可能となった。このことから、褐色および緑色色素はそれぞれタンパク質と結合しており、異なる性状をもつと考えられた。L. perturbatumについては現在ゲノムおよびトランスクリプトーム解析を行っており、色素結合タンパク質の同定が期待される。一方、日本における本属の多様性はこれまで知られてこなかったが、申請者らが採集した北海道サンプルならびに目黒寄生虫館所蔵の沖縄サンプルを解析したところ、北海道の2種と沖縄の1種は異なる種であることが確認された。また、申請者が運営する研究室SNSアカウントを用いて一般の方に広く呼びかけ、本州(東北地方)からの検体が入手できた。これは形態(色彩、柄)が沖縄のものによく似ていたが、ミトコンドリアcox1配列から別種であると考えられ、未記載種の可能せいが示唆された。
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Parasitology International
巻: 72 ページ: 101936
10.1016/j.parint.2019.101936.