散布形質の果実形態の変異について、個体間変異はクサトベラを除いて、ほとんどの例が果実色多型である。しかし、多く知られている果実色多型は果実食動物の選好性に違いをもたらしうるが、その違いは餌資源や季節で変動するため、分散能力に明瞭な違いが生じない場合が多い。一方で、クサトベラの二型は海流散布の有無という散布能力と環境選好性に明瞭な違いがあるため、選択圧の違いが検出されやすいと期待される。ハビタットシフトにともなう種子散布形質の分子レベルの進化過程を明らかにした研究はほとんどない。本研究はクサトベラを用いてこの過程を明らかにすることで、果実形態の多様性について新たな理解を深める。
|