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2023 年度 実施状況報告書

カゲロウ類における同調的な一斉羽化の適応的意義

研究課題

研究課題/領域番号 18K14781
研究機関立正大学

研究代表者

関根 一希  立正大学, 地球環境科学部, 専任講師 (10779698)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2025-03-31
キーワード進化生態 / 繁殖様式 / 地理的単為生殖 / 一斉羽化 / オートミクシス / 水生昆虫 / カゲロウ
研究実績の概要

オオシロカゲロウは河川の中・下流域に棲息する水生昆虫であり, 一斉羽化 (同調的な羽化) をし, しばしば大量発生に至ることがある。本種は地域によって雌性個体群と両性個体群が認められる地理的単為生殖種であり, 雌性個体群では二倍体の雌性産生単為生殖によって維持される。ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子解析から, 雌性個体群を形成する個体は西日本の両性個体群に起源する単系統群・単為生殖系統であること, また, 二次的に単為生殖系統は東日本に侵入し, 分布を拡大したことが明らかとなっている。このような背景の中, 福島県・阿武隈川および埼玉県・荒川においては両性生殖系統と単為生殖系統が同一河川内に分布することが明らかになってきた。これらの河川では, 両系統間で羽化の時間帯にずれが生じている。
2023年度では、単為生殖系統が東日本において両性生殖系統より広く分布し、なかには東日本固有の両性生殖系統の個体と混生する地点があることをFreshwater Science誌に発表した。また、生殖タイプを判別するための遺伝的手法として、シーケンス解析よりも比較的速く、安価で解析できるHRM法を開発した。東日本における両性生殖系統の分布は極端に限られたものであり、両性生殖系統のみだけで構成される地点は日野用水と、房総半島内の河川、阿武隈川の上流部のみとなった。両生殖系統タイプが混生する水系は、阿武隈川と荒川の2つの水系で確認された。阿武隈川においては、単為生殖系統は下流側に分布し、荒川においては、上流側に分布するものであり、本研究では、明瞭な生態的分化の共通性は認められなかった。また、混生地点では、基本的に性比がメスに偏っており、両性生殖系統メスの単為生殖能力は低い一方で、単為生殖系統では高い単為生殖能力が認められる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまで, COI遺伝子の高分解能融解曲線 (HRM) 解析を行なうことで, 両性生殖系統か単為生殖系統かを判別する手法を開発し, 安価かつ短時間でより多くの試料を扱うことを可能にした。野外調査および遺伝子解析から, 東日本における両性生殖系統の分布は非常に限られており, 両性生殖系統のみだけで構成される地点は東京・日野用水と, 房総半島内の河川, 福島・阿武隈川の上流部のみとなっている。東日本における両タイプの生殖系統が混生する水系としては, 阿武隈川と荒川の2つの水系のみである。
また, 羽化個体から採卵した成熟未受精卵をDAPI蛍光染色し, 卵表面や卵門に精子があるかどうかを蛍光顕微鏡下で調べることで, 羽化個体が交尾済みか未交尾かを調べた。羽化個体の採集と採卵を行ない, 卵の正常発生率 (生存率), 単為生殖系統 / 両性生殖系統か, 交尾済み / 未交尾かを調べた。単為生殖系統のメス成虫では、交尾済みのものは認められず、単為生殖系統の中に低い単為生殖能力を示すものが認められた。単為生殖系統の繁殖力は、両性生殖系統(受精卵)に比べて、かなり不安定と思われる。
これらの成果について、投稿中であったが、受理までに時間がかかった。主に、野外調査が限られてしまっていた(コロナ渦中で屋外調査が制限された)ことが指摘されていた.補足の調査を行い、再投稿し、受理された。

今後の研究の推進方策

主に論文執筆とデータの補完である。
両系統間で生じる繁殖干渉を明らかにする。単為生殖系統の羽化時間帯のシフトは, 両性生殖系統オスからの繁殖干渉があるとすれば説明可能である。両系統の混生地では, 単為生殖系統の単為生殖能力の低下が確認されたが, 単為生殖系統と両性生殖系統間の交雑によって繁殖力が低下した可能性が考えられる。単為生殖能力の低い個体は交雑体であるのか, 次世代シーケンサーを用いてのSNP解析を行ない, 明らかにする。また, 単為生殖系統の成熟未受精卵はオートミクス型二倍体雌性産生単為生殖で発生する運命が決まっている場合, 精子の存在により, うまく発生できなくなる, あるいは三倍体となり子孫を残すことができなくなる, といった繁殖干渉が生じる可能性も考えられる。人工交配・人工授精法を開発し, オス成虫と単為生殖系統メス成虫間での発生観察調査を行なう。

次年度使用額が生じた理由

主に論文投稿費として利用する予算である。投稿論文自体はFreshwater Science誌に受理されたが、投稿費の請求が年度内に間に合わなかった.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Distribution and parthenogenetic fecundity of obligate and facultative parthenogenetic strains of the mayfly <i>Ephoron shigae</i>2024

    • 著者名/発表者名
      Sekine Kazuki、Tojo Koji
    • 雑誌名

      Freshwater Science

      巻: in press ページ: 000~000

    • DOI

      10.1086/730389

    • 査読あり
  • [学会発表] 琵琶湖固有種ビワコシロカゲロウはオオシロカゲロウのシノニムなのか &#12316;ゲノムワイドな遺伝子多型解析を用いた検討&#12316;2023

    • 著者名/発表者名
      関根一希
    • 学会等名
      日本昆虫学会第83回大会
  • [図書] 河川生態学入門 : 基礎から生物生産まで(分担:第7章 河川生物における種内・種間関係)2024

    • 著者名/発表者名
      平林 公男、東城 幸治(分担:関根一希)
    • 総ページ数
      252
    • 出版者
      共立出版
    • ISBN
      9784320058415
  • [備考]

    • URL

      https://gyouseki.ris.ac.jp/riuhp/KgApp?resId=S000452

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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