研究課題/領域番号 |
18K14783
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
西村 祐貴 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 特別研究員 (20783012)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミトコンドリアゲノム / RNAエディティング / DYWドメイン / PPRタンパク質 / 有中心粒太陽虫類 |
研究実績の概要 |
これまでの研究により有中心粒太陽虫類Polyplacocystis contractilisのミトコンドリアでは、転写産物の700箇所以上でシチジンがウリジンに変化するC-to-U RNAエディティングが起こっていることが明らかになっていた。一方で、同じく有中心粒太陽虫類に属するMarophrys p.のミトコンドリアではこのような現象は確認されてる。近縁な生物のミトコンドリアで転写後修飾が異なる原因を探るために、P.contractilisとMarophrys sp.のトランスクリプトーム(RNA-seq)を比較した。その結果、どちらの種からもC-to-U RNAエディティングにおいて重要な役割を果たすDYW型ペンタトリコペプチドリピートタンパク質(D-PPR)が発見された。しかし興味深いことに、Marophrys sp.のD-PPRでのみC-to-U置換活性に必要だと考えられている部位が変化していた。Marophrys sp.のミトコンドリア転写物でRNAエディティングが見られないのは、おそらくこの変異が原因であると考えられる。 さらに公共データベースで利用可能な他種有中心粒太陽虫類のRNA-seqを調べたところ、正常なD-PPRと変異型D-PPRの両方を有している種は発見されなかった。これは有中心粒太陽虫類の中でC-to-U RNAエディティングを行う種がモザイク上に分布していることを示唆している。これらのことから、有中心粒太陽虫類の共通祖先でD-PPRによるC-to-U RNAエディティング機構が確立したが、その後複数の系統で独立にD-PPRが縮退し、ミトコンドリアの転写後修飾が喪われたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比較トランスクリプトームにより有中心粒太陽虫類におけるC-to-U RNAエディティングの進化について仮説を立てることができたので、本研究課題は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
有中心粒太陽虫類Polyplacocystis contractilisの核ゲノムシーケンスを行い、ミトコンドリアでのRNAエディティングに関わると考えられる遺伝子を網羅的に探索する。 また公共データベースの探索により、有中心粒太陽虫類とは系統的に離れた生物からもDYW型PPRタンパク質が発見されたので、それらの生物のミトコンドリアにおいてRNAエディティングが起きていないか検討する。
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