C-to-U型RNAエディティングはオルガネラゲノム転写物の一部のシトシンがウラシルに置換される現象で、陸上植物、ヘテロロボサ類、アメーバ類など真核生物の様々な系統から報告されている。これらの生物ではDYW型PPRタンパク質を含む共通のシステムによりC-to-U型エディティングが起きていると考えられている。本研究ではさらに広範な系統群でDYW型PPRタンパク質を探索することで、真核生物におけるC-to-U型RNAエディティングの進化を解明することを試みた。その結果、新たに4つの系統群から当該タンパク質を発見した。さらにそのうちの1つである有中心粒太陽虫類については、実際にミトコンドリアゲノムの転写物でC-to-U型RNAエディティングが起きていることを確認した。興味深いことに、有中心粒太陽虫類の中でもPolyplacocystis contractilisでは700箇所以上でC-to-U型RNAエディティングが確認されたのに対し、Marophrys sp.では全く検出されなかった。そこでP. contractilisとMarophrys sp.を含む複数の有中心粒太陽虫類でDYW型PPRタンパク質を比較したところ、Marophrys sp.及び幾つかの種においてはシトシンからウラシルへの変換を触媒するドメインの進化速度が非常に早く、活性を失っている可能性が示された。また、有中心粒太陽虫類内では通常のDYW型PPRタンパク質とC-to-U置換能が無いと考えられる同タンパク質がモザイク状に分布していた。このことから、有中心粒太陽虫類内の共通祖先においてDYW型PPRタンパク質によるRNAエディティングシステムが確立した後、DYW型PPRタンパク質の縮退によってC-to-U型エディティングが喪われるという進化が複数の系統で独立して生じたのではないかと考えられる。
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