マメ科植物-根粒菌共生系において、宿主特異性に関与する共生遺伝子群の進化を理解することは、共生関係の創出・維持機構の解明に不可欠である。 材料のハマエンドウ(海浜性)は、一部が淡水の水辺に進出している種である。これまでの研究では、水辺に進出した本種のエコタイプ(湖岸タイプ)は、淡水の湖岸において海浜タイプのものよりも成長することが示されている。また、湖岸・海浜エコタイプに付着した根粒菌に着目すると、根粒形成に関与するnod遺伝子の配列が異なることが明らかとなっている。しかし、根粒菌の宿主特異性および地域特異的なゲノム進化については未解明である。 本研究では根粒菌の接種実験を行い、宿主特異性の程度を明示する。また次世代シーケンサーを用いた解析により、水辺・海浜における根粒菌のゲノム進化を明らかにする。それらを総合して、水辺・海浜における植物-根粒菌共生系の創出・維持機構を解明することを目的とする。 今年度は根粒菌の単離培養系を確立し、感染実験まで進めることができた。系統解析については、単離培養した根粒菌における16SrRNA遺伝子の配列を取得したところ、Rhizobium leguminosarumdakeだけでなく、R. sophorae等、他のマメ科植物と共生する根粒菌が確認された。その中から、ゲノム解析に使用する株を選別するために、湖岸・海浜由来の個体から単離・培養した根粒菌を発芽種子に感染させることで、根粒菌の宿主特異性に関する知識を得ることにした。 培地を用いた感染実験では、根粒数や根粒の大きさに違いがでるものの、現時点では湖岸と海浜由来のハマエンドウにおいて、成長の差が出るものは見つかっていない。これまでの相互移植実験では、根粒菌の付着数や植物体の大きさに違いが出たことを考慮すると、培地ではなく、滅菌した湖岸・海浜の砂を用いて再度実験しなければならない。
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